経済
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偽りの経済成長―国民生活の悪化が加速

 株価が上昇を続けている。新聞の報道によると、8月末の世界の株式時価総額は、過去最高を更新した。米国などの株高がけん引しているものの、日本もこのすう勢に追随し、9月初めにはコロナ禍で株式が暴落した春先の水準を回復した。

 安倍晋三首相退陣の記者会見の日、株式市場は短時間の乱高下はあったが、すぐに安定を取り戻した。

 コロナ感染症の影響で主要国の経済水準は大きく落ち込んでいる。それとは全く乖離(かいり)した株式市場の動きは、もはや市場が実態経済の状況を反映していないことを白日の下にさらしている。

 誰でも気がついているように株高は、経済の萎縮のもとで行き場を失った余剰資金が株式市場で短期利益を求めて投機に走っている結果である。医療関係やリモートワーク関連など感染症関連の商品やサービスに関わる企業の株が投機の対象となった。

 そうした資金投入は、その産業への支援の意図から出ているものではなく、あくまで投資家の私的な利益につながるだけであり、国民経済の回復には容易に結びつかない。

 長く続くゼロ金利政策で金利は景況を判断する指標にはならない上に株価も同様である。安倍政権は、長期政権を誇り、その退陣表明でも経済政策であるアベノミクスの成果を強調した。

 しかし、その第一の指標である株価の回復は、リーマン・ショック、東日本大震災の影響で落ち込んだ株価の回復という側面が強い。つまり、この回復は、経済実態の改善を反映したものとはいいがたく、内実に乏しいものである。

 長期の政権下で、雇用が回復したことも強調されている。直近のコロナ禍を別にすれば、雇用環境は改善されているが、それも政策効果というよりは、少子高齢化のもとでの労働力不足という客観的な条件に依存するところが大きい。

 しかも、雇用の回復は、非正規雇用の増大によって実現されていることは誰でも知っている。

 この非正規雇用の増大によって勤労者の平均所得は低下傾向にある。それが、企業収益を改善させたとはいっても、これも株価第一の経済運営に資するだけで、国民生活の改善にはつながっていない。

 むしろ、国民の生活状態は悪化しており、それはコロナ禍で加速している。

 政府は、表面的な取りつくろいによって経済政策の効果をうたいあげているが、それは粉飾決算のようなものであろう。顧みれば、この政権は、あることをないと言いつくろい、疑惑を持たれても、真実を明らかにしてこなかった。その流儀は、経済政策の自己評価にも貫かれている。

 偽りの経済成長、巨額の政府債務、政治不信、空疎な言葉が安倍政権の遺産とはなんとも寂しい限りだ。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly9月14日号から転載)

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