経済
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違うならば、きっちり説明を―「第2波」なのかどうか

 8月19日から開かれた日本感染症学会において、舘田一博理事長が「今、日本は第2波のまっただ中にいる。この先、どう推移するのか注意が必要だ」とする見解を示した。

 専門家の状況認識はかなり深刻なものとなっている。これに対して、厚生労働省は「第1波や第2波の定義をしていないのでコメントできない」と状況把握には逃げ腰。また、西村康稔経済再生担当相は「大きな波であることは間違いないが、緊急事態宣言を発出した時とは状況が違う」との見解を公表した。

 もちろん「第2波」であるかどうかは重要ではない。しかし、感染の拡大が再び懸念される状況にあるのは、明白になっている。それを「第2波ではない」とか「第2波であるかどうか定義次第」と、国民の不安や疑問に相変わらず正面から答えようとしないのは、行政の責任放棄だろう。

 その上「状況が違う」というのであれば、どこがどのように違うのかをきちっと説明する必要があろう。それが政治の責任であり、その説明なしでは緊急事態宣言が不要だと納得させることはできない。

 確かに状況は違う。自らのリーダーシップで感染拡大を抑え込んだという手柄を得ようと、思いつきの対策を繰り返していた安倍晋三首相には、そんな空回りの意欲さえ失われた。健康不安説がささやかれながら、側近たちの後ろに隠れて、責任ある発言も行動もみられない。

 不要不急のGo To キャンペーンによって経済支援を拡充するよりも、現状では医療者への支援を拡大する必要がある。 ただ、それも世界最大規模を強調した経済対策に財源を食いつぶし、これ以上国の借金を増やすこともできない。

 違っているのは、感染状況ではなく、感染対策と経済対策の二兎を追う政策が行き詰まっていることだろう。だからこそ、「第2波」と指摘されて感染対策を優先する必要性が高まっても、そちらに踏み切るだけのカネも知恵もない。さまざまな疑惑を言い逃れてきた政権だけに、政治指導力が低下する一方で、言い繕(つくろ)うことだけは巧みになった。

 それも限界にきている。敵前逃亡気味の首相の下で官邸という指令部が機能不全に陥っている。そのために、感染症に立ち向かう最前線の医療現場は、ゲリラ戦のような対応を強いられ、消耗していく。所得の機会を失った人たちは、社会的給付も届かないままに、生活と生命を脅かされている。それは、太平洋戦争末期の絶望的な戦局の中で、国民に竹やりで本土決戦を強いようとした戦争指導の歴史を思いおこさせる。

 日本国憲法によって国民の生存権の保障は政治的な責任とされている。これに全力を尽くさない政府は、憲法違反だろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly8月31日号から転載)

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