経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

消えた首相―いつ、存在感示すのか

 新型コロナウイルス感染症の猛威は政府の期待に反して、衰えを見せない。もはや、1日の全国の感染者が1千人を超えても、東京で400人を超えても、それが「新しい日常」の一部になっている。もちろん、感染症との共生をイメージしたこの言葉に、これほどの感染者数は想定されていなかっただろう。ただ、それが現実である。

 この現実になかなか政府は向き合おうとしていない。7月末になって東京都の小池百合子知事が飲食店の営業時間の短縮を要請するなど、地方自治体レベルの動きが慌ただしい。

 他方で、経済との両立を目指した政府の「Go To キャンペーン」では、リスクは国民負担といわんばかりの取り組み方だ。

 そんな中で、しばらく安倍晋三首相の姿が見えない。専門家会議などには出席しているようだが、ぶら下がり取材もニュースにはならない。経済対策と感染防止対策はそれぞれの担当大臣に任せきりで、いったいこの国のトップが何を考え、この国をどのように導くつもりなのか、というビジョンも分からない。

 野党は臨時国会を開いて首相の言葉を引き出そうとしているが、それは、政府を批判する野党のパフォーマンスに資するだけに終わる。首相から意味のある発言が出てくることはまったく期待できない。

 つまり、野党の戦略は失策・失言ねらいのものだろう。しかし、そんな政局狙いの政治行動に血道を上げている場合ではない。

 現状は、感染の拡大に対処するために経済活動にブレーキをかける役回りを地方自治体の首長に押しつけ、政府は経済活動の活性化のためのアクセルを踏もうとしている。この踏み間違いは重大な事故になるが、同時に踏んだら、車は激しくきしみ、スピンしてしまうだろう。

 4月初めの緊急事態宣言の発出前にも、責任を回避しようと、ちゅうちょし続けていた。この時の煮え切らない政府の態度を思い出させる対応が続いている。

 もともと第2波の襲来は予想されていた。従って、宣言解除後にも、再び宣言を発出する可能性も想定した準備もされていたのではないか。

 感染は押さえ込めた。だから次は経済再生だと意気込んだことは理解できる。しかし、重要なのは冷静に状況を判断し、必要なら大胆に方針を転換することだ。未知の感染症が予想外の展開を示すことはありうる。

 だから状況の変化に応じた柔軟さが求められる。そうした大胆な転換ができるのは、安倍首相だけである。度胸のない首相にそんな期待をかける国民は寂しい限りだ。

 思いつきのような施策で散々批判を浴びてきたから、担当大臣の後ろに隠れている方が居心地はよいのかもしれない。しかし、存在感を示すのは…、

 「今でしょ、安倍さん」

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly8月10/17日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ