経済
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ご都合主義の政治―「邪魔者は消えろ」?

 政治家たちは感染防止から経済対策優先へとかじを切った。

 7月1日現在、東京では50人を超える新規感染者が確認された。「東京アラート」の基準に従えば、防止対策を強化する状況になったが、それを避けるための新基準が設定された。

 慌てたのか、小池百合子都知事お得意の「カタカナ語」もないままの豹変(ひょうへん)である。政府のもたつきを皮肉るように、明確な基準を示して自粛の解除を進めると、数値基準を発表した舌の根も乾いていない。「東京アラート」が単なる政治的なパフォーマンスだったということだろう。

 一方、前触れもなく全国的な休校要請をした後は、徹底した感染対策に踏み切れなかった政府の背中を押し、専門的な見地から、迫り来る感染リスクを明確なかたちで示してきた政府の専門家会議が、突如として廃止された。より広い専門家の意見を聞くためというのが表向きの理由だが、説明不足だ。

 国民は政府が右往左往する中で明確な意見を表明した専門家会議を信頼してきた。安倍晋三内閣は、国民に負担を強いる厳しい判断を下す際には「専門家会議の意見」によると、責任転嫁したかたちで感染症対策を進めてきた。緊急事態宣言の下でオーバーシュート(爆発的患者急増)を避ける「3密」対策などは専門家の意見に沿ったものだった。

 他方で効果的な経済対策、特に休業補償などの緊急対策は後手に回り、いまだに必要なところに届いていない。

 ところが、感染状況が落ち着きをみせ、経済対策の不備に批判が高まったために、政府は緊急事態宣言の終了、自粛の解除を急いだ。

 この過程では、政府の方針が「明日には専門家会議の意見を聞いて」正式決定されると報道が先行した。感染対策を進めるときとの手順の差は、解除の際には政府が前面に出て主導性を強調し、専門家会議が形式化したことである。

 専門家会議が政策を決定しているような印象を与えたといわれているが、それは政府が疫学的な専門意見を踏まえて、感染対策を自ら決定する責任から逃げ回っていたからにすぎない。

 さまざまな専門家の中で、感染症対策の専門家は、経済再生にかじを切ることに最も慎重な部類の専門家だろう。だから、邪魔者は消えろとバッサリ切ったのが真相ではないか。

 公明党にも事前説明はなかったというから、例のごとく安倍首相の側近だけの独断的な決定だったようだ。

 「アベノマスク」の反省もなく、よくよく懲りない人たちである。多様な意見を聞くとはもっともらしいが、都合の良い意見だけを聞き、多様な意見を聞かないのはこの政府の悪癖だ。

 いつまでご都合主義で国民を振り回すつもりなのか。安倍首相は広く衆議を集め、耳に痛い声も聞いて誰もが納得できる判断を下すべきだろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly7月13日号から転載)

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