経済
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世界最大の経済対策―理解できていない本質的課題

 安倍晋三首相は、5月25日に緊急事態宣言の全国的解除を発表するとともに、第2次補正予算を組み、第1次と合わせて「国内総生産の4割にのぼる空前絶後の規模のものであり、世界最大の経済対策で、100年に一度の危機から日本経済を守り抜く」と強調した。

 経済対策が必要であることは議論の余地はないが、この首相の発言には、この政権が現状の本質的課題を理解できていないことが表れている。

 確かに200兆円という対策は大規模なものだが、これだけの規模がなぜ必要になったのか。それは、初動の感染対策の不備や医療体制への支援の遅れ、必要な人々になかなか届かない救済の手など、失態に失態を重ねた結果であろう。世界最大規模の対策の背後には世界最悪の失政がある自覚がない。

 しかも、この対策の裏付けは国債であり、いずれは将来世代に多額の負担を残すものである。今を救うために、将来の所得の一部を使うのは国民自身である。首相は、そうした負担をお願いする立場にある。誇らしく語る話ではない。

 それだけではない。「日本経済を守る」という目標の設定も首相の目線の先が透けて見える。本来であれば、生活の困窮者、倒産の危機にある中小零細の事業者など、社会的な安定を脅かしている問題の解決が最終的な目標であろう。経済を再建することは、その手段とはなっても最終目標ではない。景気回復が国民生活の安定に直ちにつながるわけではない。

 所得の分配の仕組みなどに欠陥があり、富裕者を優遇して所得格差を拡大し、輸出に貢献する企業に甘い経済政策体系を構築してきた現政権の仕組みでは、国民生活の改善には簡単に届かない。そうした仕組みにしか関心がないから、「国民生活を守る」というべきところを「日本経済を守る」と言い切って平然としていられる。

 第2波の感染拡大が懸念される中で、どのようにして国民生活を守るのかという視点に立ち返るべきであろう。不評を買うばかりのアベノマスクを「次なる流行にも十分反応きるよう、布マスクを多くの国民が保有することに意義がある」と菅義偉官房長官は記者会見で強調した。しかし、次の流行の時にはマスクの心配はいらないくらい供給体制は整備できると、なぜ胸を張れないのだろう。

 そうした準備が整っていないとすれば、医療体制の整備なども二の次になっているのではないか。民主党政権下で成立した特措法に沿った行動計画に実質を与えることを怠ってきた政権である。検察官の定年延長で国民の信頼を大きく損なった安倍政権が、国民生活に寄り添って将来の安全・安心を図る政治の根本を忘れては、日本の将来を託すことはできない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly6月15日号から転載)

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