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「風のたより~地域経済」地方政治にルネサンス

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、権力構造が転換するかもしれない。振り返れば、14世紀にヨーロッパでペストが大流行した際、中世の教会の権威は崩れ、ルネサンスにつながった。今回のコロナの流行で地方でも、新たなリーダーが躍進する時代に突入するのかもしれない。感染症は世界の風景を一変する。

 それをほうふつとさせるのは、若手の知事の台頭である。そのうちの1人は、北海道知事の鈴木直道だ。2月末に緊急事態宣言を行い、道民に週末の外出自粛を求めた。法的根拠を伴わない宣言で、日本じゅうが驚いた。道民の命を最優先というメッセージだ。

 鈴木は、頻繁に記者会見し、自分の言葉で話す。「政治判断は結果がすべて。結果責任は私が負う」。歯切れのいい言葉は、圧倒的な支持につながった。支持率は実に88%だ。

 4月の2回目の緊急事態宣言の際には、札幌市長の秋元克広と共同で会見を開き、協調路線をアピールした。最大都市の首長と足並みをそろえるのは、住民の安心につながる。

 鈴木はもともと、東京都の職員として、夕張市に派遣され、夕張市長選に立候補した。年収250万円の夕張市長としては、借金返済に奔走した。

 つまり、財政再建だ。そのために自ら現場に出向いた。私が以前取材した際、鈴木のこんな言葉が印象的だった。「財政再建は痛みを伴います。飲食店に呼び出され、4時間も住民からお叱りを受けることもあります。ただ、人はどんなに怒っていても、しばらくすれば収まってくるのです」

 忍耐強さが持ち味だ。人の話をじっくり聞く。それもそのはず。鈴木はもともと、高卒で都庁に入り、法政大学の夜間に通った苦労人だ。

 鈴木とは対照的なのは、石川県知事の谷本正憲だ。3月27日に、「無症状の人は(東京から)お越しいただければ」と県内への観光をアピールした。国内での感染者が急増している際の発言だ。「危機感がなさすぎる」と、全国で批判の声が噴出した。

 その後、石川県の感染者数は急増し、発言を撤回しているが、軽率のそしりは免れない。

 谷本は、現職で最多の当選7回の知事だ。元自治官僚で、行政経験は長い。危機管理のノウハウは圧倒的に、経験値があるはずだ。

 これまで日本では、官僚出身の知事が主流だった。とりわけ総務省だ。右肩上がりの時代には、それが無難だったのだろう。

 しかし、今回のコロナ問題をきっかけに、そんな流れが大きく変わるような気がする。北海道の鈴木だけではない。大阪府の吉村洋文、東京都の小池百合子ら、新たな知事像が圧倒的な存在感を示す。地方政治にルネサンスが起きようとしている。(敬称略)

(ジャーナリスト 出町 譲)

 

(KyodoWeekly6月8日号から転載)

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