経済
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「本の森」MMTとは何か―日本を救う反緊縮理論

島倉 (しまくら・はじめ)

●304ページ

●角川新書(税別900円)

 

デフレは緊縮財政が原因か

 

 「時流に乗って、新奇なことを書いている雑誌や本は読んではならない」。ギリシャ哲学者の田中美知太郎は門下生にいつもこう話していた。それで言えば、「国はいくら借金をしてもかまわない」「税金は政府が収入を得る手段ではない」。こんなMMT(現代貨幣理論)の主張はこれまでの経済学の常識を超えて「新奇」すぎるので読むに値しないのだろうか。「トンデモ理論」「異端の経済学」と、MMTは際物扱いされている。

 本誌では昨年から「『はじめの一歩』~MMT」を掲載して、MMTとはどういう経済理論かということが公正に解説されている。したがってMMTの説明は避ける。

 また、昨年、理論経済学者の野口旭が「ニューズウイーク日本語版」で6回にわたって批判的な検討を詳細にしている。ネット上で無料閲覧できるので関心のある方はそちらをご覧いただきたい。MMTが経済学でどういう立ち位置なのかは経済学者が議論すればいいこと。われわれが関心のあるのは、それが日本経済にとってどういう意味があるのか、役に立つのかということだろう。

 本書の3分の2はMMTの説明で、残りは日本経済論である。MMTがまだ知られていなかったころに上梓(じょうし)した「積極財政宣言」(新評論)でも指摘しているように、著者はこう言う。「日本は財政危機ではない」「金融政策の効果は乏しく、財政出動こそ必要だ」。財務省が最も嫌がる主張だ。

 そして、この二十数年のデフレ経済は「緊縮財政が原因である」。このような主張をMMT理論も引用しながらデータを使って説明していく。特に貨幣論や銀行の信用創造の説明はなるほどと思う。問題は機能的財政論という考えだろう。

 だが、国が借金を増やし続けるとそのうちに行き詰まる、家計貯蓄を食いつぶし、2020年にも金利が急上昇して財政が破綻する、と国民を脅かし続けてきた財務省系の経済学者よりはまともな気がする。ちなみに著者は翻訳本「MMT現代貨幣理論入門」(東洋経済新報社)の日本語訳の監訳を担当している。

 本書と同じ時期に出版された「MMT 現代貨幣理論とは何か」(講談社選書メチエ、井上智洋)も併せて読むと、一層理解が深まる。分かりやすく説明しており、こちらも勧める。

 MMTによると、日本政府は自国通貨建てで無制限の支出能力がある。つまり財政危機に落ちることはない。だから新型コロナウイルス対策として大盤振る舞いをしてもなんら問題はない。財務省の緊縮政策をやめさせ、国債を大量に発行して米国並みの定額給付や消費税減税に踏み切ることぐらいしないと危機を乗り切れないだろう。今こそ、サボってきた財政政策を実施するときなのだ。(敬称略)

(北風)

 

(KyodoWeekly4月6日号から転載)

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