経済
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かけ声はいらない―リーダーのオオカミ少年化

 新型コロナウイルス感染による影響が、世界規模に拡大していく中、株式市場が惨落し、先行きの不安に誰もがさいなまれている。

 しかし、これに対処する経済対策の具体像はいまだ見えない。3月20日近くなって、有識者の意見を聞いて抜本的な対策をまとめると安倍晋三首相は言明しているが、ずいぶんとのんびりした話だ。

 新型コロナの問題が顕在化した2月初めには、影響が経済全般に及び、株式市場が危険な状態になることは見通されていた。確かに感染状態は当初の予測を超えて広がったが、それが中国とその周辺に抑え込まれたとしても、日本に与える打撃の大きさは指摘されていた。

 それからすでにひと月半以上経過しているのに、政府から表明されるのは、学校休校に伴う所得保障を「実施する」という言明などだけで、その実行方法などは不透明なままだ。そんなことでは国民の安心感をもたらすことはできない。売り上げが急減している飲食店、旅館を含めた中小企業対策も同様だろう。

 3月の決算期を控えて資金繰りに困難が生じることも予測できたろう。実際、経済産業省のホームページなどでは、相談窓口設置が告知されてはいるが、政府の対策がどの程度のものかも分からないまま、緊急融資の申請が認められるまでどのように持ちこたえろ、というのだろう。

 「間髪を入れず実施」と首相の口から元気のよいかけ声だけが繰り返されている。しかし、具体策が提示されるまで時間がかかりすぎている。現行の法制度のもとでもできることはたくさんあったはずだ。

 政府が適用をためらっていた新型インフルエンザ特措法の行動計画では、国内に感染が拡大する時期を想定して、政府関係金融機関の融資条件変更など適切な措置を講ずることや、影響を受ける中小企業及び農林漁業者などの経営の維持安定を支援するための特別融資の実施、信用秩序維持が書き込まれていた。

 法改正が必要という政府の判断が対策を遅らせたことは間違いない。そうした態度に忖度(そんたく)したのか、実施に当たる諸官庁の動きは滞っている。

 政治主導の政策決定においてパフォーマンスを重視した演出へのこだわりが、こうした弊害を生んでいるといってもよい。安倍首相は、自分の得点を稼ぐ機会にしたいのだろう。

 ていねいに説明すると言いながら説明しない。そんな口先だけの首相の言葉を、もはや誰も信じない。国のリーダーのオオカミ少年化は嘆かわしい。かけ声ではなく、具体性のある対応策をできることから直ちに実行することが求められている。

 株価を戻すことは二の次でよい。雇用不安、所得減少などにより脅かされている社会的弱者に直接届くきめ細かい施策が速やかに実施されなければならない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly3月30日号から転載)

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