経済
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日本経済に与える影響―新型肺炎の流行

 今から約100年前、1918年から20年はじめにかけて、世界的にインフルエンザが大流行し、感染者5億人以上、死者2千万~4千万人と、爆発的に流行した。日本でも18年の11月と20年1月の2回をピークとする流行により、合計20万人を超える死者が記録された(東京都健康安全研究センター年報2005年による)。

 医療技術や感染症に関する知識の水準がはるかに低い時代であり、最初の発生地のアメリカから第1次世界大戦のためにヨーロッパに派遣された兵員たちとともに、ウイルスがヨーロッパに運ばれて感染が拡大した。戦時中の情報統制のために状況が十分には伝わらず、中立国であったスペインの大流行が日本にも伝えられたために、「スペイン風邪」と日本では呼ばれるようになったという。

 感染症対策の進歩によって、現在問題となっている中国・武漢発のコロナウイルスによる新型肺炎は、これほど深刻な事態にはならないだろう。

 ただ、大量の人の移動(兵員輸送)や情報統制が流行拡大に深く関わっていたことは、今でも重視すべき問題だ。症状が確認できない感染者がいることがすでに明らかになっている以上、ビジネスでも観光でも人の移動を当分の間、厳しく制限せざるを得ない。

 そして、情報開示が不十分な発生国からの発信と、日本国内の感染状況を見極めながら、慎重な対処が必要になる。

 その点について日本政府は万一にも抜かりはないだろう。

 しかし、問題はその先のことである。中国経済が大きく減速することは免れないし、その影響はいち早く株式市場に表れている。春節(旧正月)期の観光客の激減による打撃なども無視しえないが、この間、株価上昇が経済安定の頼みの綱だったことを考えると海外の経済活動の減速は、日本に深刻な影響を与えかねない。

 日本の株価(日経平均225種)は、安倍晋三政権になった2012年の1万円前後から2万3000円台に上昇したが、これを裏付ける経済成長が実現できているわけではない。当初から外国為替市場や海外市況の上昇に、ただ乗りしただけの景気回復で、基盤となる経済状態の改善は進んでいないからだ。

 アベノミクスが砂上の楼閣(ろうかく)であったといわれないにように、よくよく用心して経済政策運営に当たる必要がある。

 東京のマンション価格が1990年のバブル期水準に達しているなど、金余りにより行き場のない金が投機に向かっている。だから、何かと材料を拾っては株価の上昇局面を演出することはあるだろう。しかし、それはバブルでしかない。

 バブルはいずれ破綻する。その後には国民生活に深刻な影響が生じるだろう。暗黒のシナリオが現実にならないように、口先だけではない本気の取り組みが求められる。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly2月17日号から転載)

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