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「陸海空の現場~農林水産」多大な打撃か「アベノリスク」

 2020年の世界の最大リスクは米大統領選挙とされるが、日本にとっては、その大統領と最も懇意と自認する安倍晋三首相では、との声がある。

 その理由は日米貿易交渉第2幕。4月末にも決める新たな交渉の枠組みが昨年の交渉同様、「トランプ大統領の言いなり」になる「アベノリスク」という訳だ。

 「自分に対する異論を許さない権力者は、自分より強い権力者には異論を唱えず、追従する」(山口二郎法政大教授)と指摘される安倍首相の性格だ。米国や中国、ロシアといった覇権国に弱く、十分な主張をいえないという。

 その懸念は日米貿易交渉第2幕で色濃く残る。今年元日に発効した日米貿易協定では「一方的譲歩というのは当たらない」と言いながら、日本が環太平洋連携協定(TPP)並みに牛、豚肉の関税を引き下げて譲歩した。

 これに対し、米側は事実上の交換条件である自動車で追加関税をちらつかせながら、TPPで約束していた将来的な関税撤廃や、同部品の即時関税撤廃をほごにした。日本から米国への輸出額の3割以上を占める自動車・同部品を除くと米側の自由化率は50%台となり「90%以上」とする世界貿易機関(WTO)のルール違反になる。

 それを踏まえたかどうか分からないが、安倍政権は米側の自動車・同部品の関税撤廃を前提に「国内総生産(GDP)が0・8%引き上げ」との試算値を示した。首相は「米国の関税撤廃率は92%」と明言し、「関税撤廃が前提である以上撤廃率や試算に加えることに問題はない」というが、自動車・同部品の関税撤廃は今後の交渉次第で何も決まっていない。

 これは架空の計算でありWTOのルール違反隠しというしかない。「自由貿易の旗手」と宣言してきた首相は、自己矛盾をあらわにした。

 牛肉のセーフガードの発動基準も、TPP米国離脱前のままの61万トンに新たに24万トン余りを追加した。しかも発動したら90日以内に高い基準にする骨抜きの内容で押し切られた。

 そして、早くも本番の2次交渉だ。「(関税交渉の範囲を)自動車・同部品だけを想定している」(茂木敏充外相)とするが、米国議会では対立の小さい分野に限定した今回の協定を「不十分」(下院貿易小委)とする不満が多く、今回見送りのコメ、乳製品の対日輸出拡大や、食品安全などの非関税障壁を念頭に、「より包括的な合意が必要」(同)との意見が目立った。

 とても日本の思惑通りには進まないことを予感させる。大統領選挙本番を迎えたトランプ氏はどんな強硬姿勢を見せるのか。これに従来同様、安倍首相が従属姿勢一辺倒で臨めば、「アベノリスク」は日本にとって多大な打撃をもたらすことになる。

農政ジャーナリスト 小視曽 四郎(おみそ・しろう)

 

(KyodoWeekly2月3日号から転載)

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