経済
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欠如する危機意識―首相の施政方針演説

 第201回通常国会において安倍晋三首相の施政方針演説が行われた。昨年は天皇の代替わり、今年はオリンピックと、その年のトピックにかこつけた話題を盛り込む一方で、日本が直面している政策課題に関する具体的な言及が乏しいことは、予想通りだった。

 昨年は政策課題の第1に掲げられていた「全世代型社会保障への転換」は、復興五輪や地方創生、成長戦略のあとの1億総活躍社会の1項目に格下げになった。財政再建と社会保障の充実は、国内の経済問題としては最も重視すべき課題だが、それに対する危機感がない。アベノミクスの成果として公債発行額の減額を成果として強調しているが、公債残高の対国内総生産(GDP)比率は16%直前まで高まり、利払い費は増加。2025年のプライマリーバランス黒字化は絵空事だろう。

 社会保障の充実のために多様な施策がうたわれているが、財源の裏付けはない。国民負担の増加を避けるのであれば、無用な政府支出を削減すべきであり、その優先順位を明確化する必要がある。たとえば、日米関係を重視して中東地域に多額の費用をかけて自衛艦を派遣することは、家族の食費を削って交際費に大盤振る舞いをするような愚策だ。

 外交問題において言及されたアメリカ海兵隊グアム移転が実現されるのであれば、沖縄の基地負担のあり方は大きく変わるだろう。その着地点も見極めず、辺野古への移転を強行する理由はない。まして、当初計画とは異なって工事期間も費用も長期・多額となることが判明している。無駄遣いの危険もあり、立ち止まるべきだろう。

 こうした点は、解決すべき課題に対して真摯(しんし)に向き合い、危機感を共有して解決に知恵を出すという姿勢を、政府が失っていることを示している。

 そのような危機感の欠如は、国際的には化石燃料からの脱却に関心が集まっているにもかかわらず、これを避けたことにも表れる。同様に貿易面での対立による不安定要因を抱える世界経済に対処し、日本の通商政策をどのような方針でかじ取りするかも明確ではない。

 施政方針演説は、サミットに言及して「世界が向かうべき未来像」を見定め、日本の責任を果たすと述べるにとどまる。これでは日本政府が何をするのかは分からない。

 憲法改正について国会の議論に期待すると述べた安倍首相が改正にどのくらい本気なのかも伝わらない。自公両党でもまだ一致点が見えない中で、この問題にこだわり続ける狙いは、大合同に動いていた野党の結束にひびをいれることだったのかもしれない。政権維持に有効なことについては、嗅覚が利くらしい。

 何一つ本気度が伝わらない施政方針に、この国の未来を託すことはできない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly2月3日号から転載)

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