経済
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最終的には国民の選択の問題

 2019年9月、政府は「全世代型社会保障検討会議」を設置し、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を進めている。そもそもこの議論の背景として、高齢化などに伴う社会保障費の累増にどう対応していくかに関する国民的コンセンサスが欠如していることがある。最終的には国民の選択の問題なのである。

 経済協力開発機構(OECD)諸国における社会保障支出と国民負担率の関係をみれば、日本の現状は「中福祉・低負担」になっている。「社会保障サービス水準は維持してほしいが、増税や自己負担増は嫌だ」という国民一般の認識によるものだ。

 ただ、このままでは日本の社会保障制度は持続可能ではない。社会保障費は今後とも増え続ける。特に増え方が大きいのは医療・介護費で、特に70歳代後半以降に増えるため、高齢化率上昇が鈍化しても増え続ける。後期高齢者の医療費自己負担1割を続ければ公費負担は急増する。後期高齢者医療に支援金を拠出している現役世代の健康保険財政が破綻しかねない。

 それでは、医療・介護制度はどのように改革すべきなのか。

 日本は、国民皆保険制度のもと、国民は自由に医療機関に受診し、治療を受けることができる。また高額療養費制度もあり、大きな医療費がかかっても自己負担を一定額以下に抑えられる。こうしたことが、いざというときの国民の大きな安心になっている。国民皆保険制度を将来とも維持したいのならば、制度の持続性に必要な自己負担増は一定やむを得ないのではないか。全世代型社会保障検討会議でも議論のあった負担能力に応じた後期高齢者の自己負担割合2割、受診時定額負担、市販品類似の医薬品の公的保険対象外化は必要なことだろう。

 医療の需要者(患者)側の改革に加えて、医療の供給側に関しても改革が必要と考える。日本は医療機関にフリーアクセスであるが、「かかりつけ医」の制度を確立し、急性・重症者だけ大病院が治療にあたるようにすべきだ。

 また、情報通信技術を活用し、医療情報(電子カルテなど)を院内にとどまらず、院外の医療機関同士でも共有できるようにすることが必要である。そこに健康保険証にも活用が検討されているマイナンバーカードの活用も有効だ。そうすれば、過剰受診・投薬や重複検査もなくなり、患者にとってもよいし、医療費を効果的に削減できよう。

 介護については命と直結する医療とは違い、発想転換した改革ができるのではないか。介護は基本的に専門サービス業ととらえ、ニーズに応じたサービスの多様化、質の高いサービスにはより多くの対価が支払われてよい。規制緩和を行い、混合介護も積極的に推進すべきだ。

 多様な事業者による競争促進とサービスの多様化により、介護を雇用吸収力の高い成長産業化することが重要といえる。

 政府には、社会保障の将来像を負担のあり方も含めて選択肢を示し、国民的な議論とコンセンサスづくりを、今回こそ本気で取り組んでもらいたい。

(アジア太平洋研究所 主席研究員 藤原 幸則)

 

(KyodoWeekly12月30日/1月6日号から転載)

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