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「法令に従って」の常とう句―データは公文書ではない?

 神奈川県のデータディスクの廃棄に重大な問題が発生した。データの遺漏を防ぐための廃棄の手続きが順守されずに、持ち出した社員によってネット上で販売されたという。売却された記憶媒体数は約4千、神奈川県だけの問題ではないことが明らかになっている。

 不幸中の幸いというべきだろうが、転売者は収録されているデータの価値には関心がなかったようだから、データ流出という最悪の事態は避けられた。それにしても、廃棄を依頼した側も、受けた側もともに管理のずさんさが明白で、無責任に過ぎる。日本品質を誇っていた日本企業の仕事に対する真剣さは失われたようだ。

 データ廃棄前に、内閣府にデータが全く復元できないほどに完全に廃棄する方法を教えてもらうか、廃棄を依頼したら安心できるのかもしれない。

 しかし、この事件に関する専門家の解説では、物理的に廃棄する以外に、ディスク上のデータを廃棄するのはかなり困難で手間も暇もかかるらしい。それなら、内閣府のデータは本当に復元不可能なのか。

 もちろん、安倍晋三政権は、黒も灰色も何もかも白と言い切ってはばからない最悪の「ワンチーム」だから、何を言っても聞く耳を持たないだろう。しかも、つじつまが合わなくなりそうになったら、「閣議決定」によって、政府のそれまでの定義も変え、木で鼻をくくったような答弁書で幕引きを図る。閣議決定も重みを失ったものだ。

 しかし、閣議決定は、真実を確認する手段ではなく、内閣の考えを表明したものにすぎず、説明でもない。名簿が開催から1カ月にも満たない期間で廃棄されたことの説明は、「法令に従って」という常とう句で済ますのではなく、誰が、いつ定めた規則に従ったものか、そこから始めるべきだろう。そうした細部に言及することで説明の確からしさが増すはずだ。

 そして、紙媒体の資料がシュレッダーにかけられた後に残っているデジタルデータが公文書ではないという主張は、どのような法的根拠によるものなのか。国会議員から質問が出ている以上、それに対応するために、最大限の努力をするのは担当省庁の当然の義務だろう。デジタルデータ復元のための時間的余裕は十分にあった。それは担当職員の問題ではなく、担当省庁全体の責任だ。

 そして、その職務怠慢を行政の長が見逃していることだけでも、安倍首相の無責任さは重大である。それを棚上げにして、言葉だけで「適法」「適正」と手続きの正統性を主張しても誰も納得しないのは当たり前だ。

 政策論争が深まらなかった責任は、臭い物にふたをしようとした側にある。政治が襟(えり)を正さなければ、地方自治体や企業も責任転嫁に走るだけだろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly12月30日/1月6日号から転載)

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