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美しい演説はいらない―見透かされた口先だけ

 今年の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)は、12月にスペイン・マドリードで開催した。

 これより先、9月に米ニューヨークの国連本部で開かれた「気候行動サミット」では、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんが若者を代表して厳しい批判演説を行い、注目された。

 このサミットで日本は、安倍晋三首相が演説することを要望したが国連側から断られた。日本政府が、二酸化炭素排出が特に多い石炭火力発電の推進方針をとっていることが問題視されたとされている。グテレス国連事務総長は開催に先立ち「美しい演説ではなく具体的な計画」を用意するよう求めていたから、これに応える演説が期待できないと判断したのであろう。

 この気候行動サミットでは、各国首脳の多くが、2050年までに排出を実質ゼロにする目標や、再生可能エネルギーの導入拡大、途上国への資金援助増額などを表明した。日本政府にはこの世界的な動きに同調し、率先して二酸化炭素削減に努める準備はなかったのであろう。12月のマドリードでの会議でも、日本からの積極的な発信はないだろう。これほど時代錯誤の方針を堅持することが、国際社会からどう受け止められているか、真剣に検証する必要がある。

 日本を見る目は「美しい演説はいらない」という国連事務総長の言葉に集約されている。菅義偉官房長官は「国連側から発言要請があったが日程の都合上、参加できなかった」と説明したが、この人の「ない」という説明が信頼するに足らない、取りつくろいであることは明白だ。

 それにしても、首相の言葉は「美しいだけで」「実がない」「具体策がない」と指摘されたことは、日本にとって重大である。いかに外交の成果を誇っても、相手国には「口先だけ」だと見透かされている。

 だとすれば、日米貿易協定の内容説明も信頼できないものなのだろう。北方領土交渉が進展しないのも、首相の本気度が低いことが見え見えなので、選挙向けのパフォーマンスにロシア側が付き合ってくれているだけだろう。首相は、長期政権を維持し、その都度、国民に期待感を持たせるような言葉によって支持を引き寄せてきた。しかし、その正体は、国際社会からは信頼できない、具体的な施策に乏しい政治家と判定されている。

 具体策に乏しいのは、温暖化対策だけではない。ほとんどすべての政策が、たとえば「同一労働同一賃金」「少子化対策」「教育無償化」などスローガンとしてはよくできているが、具体的な施策はない。

 おそらく、桜を見る会に出席する機会を提供する程度で選挙民は離れることはない、それ以上に政策的なサービスの必要はないと見下しているのだろう。私たちは、「美しい言葉はいらない」と本音で政治に発言する必要がある。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly12月16日号から転載)

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