経済
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「風のたより~地域経済」マイナス入札

マイナス入札された深谷市の体育館=2018年夏(深谷市提供)

 高度経済成長のころに建てられた施設は今、一斉に老朽化している。解体し、新たな建物を建てるのは巨額の費用がかかる。ただ、放置していても、維持管理費は必要だ。そんな中、埼玉県深谷市は2018年12月、大胆な手段に打って出た。全国初のマイナス入札だ。公共施設の跡地を譲渡する際、お金をもらうのではなく、業者に支払う仕組みだ。

 対象となったのは、旧小学校の体育館の施設と敷地だった。予定価格はマイナス1340万6千円に設定された。そして、最も少ない金額、マイナス795万円で落札された。

 市は業者に795万円支払うわけだが、決して損をしないとみている。その理由はマイナス入札には、条件があるからだ。落札した業者は自分で建物を解体しなければならない。

 市の担当者は説明する。「公共施設は、自治体が解体し、さら地にして売却するというのが一般的だ。こうしたやり方においても、自治体が解体費を負担している。このため、解体費が土地の売却額を上回る場合、実質的には、マイナスとなる」(公共施設改革推進室大野忠憲室長補佐)

 もう一つ、大事なポイントは、スピード感だ。市が解体する場合、解体業者の入札など手続きを踏むため、それだけでも1年ほどかかる。さらに解体しても、その土地は、売却できなければ意味がない。買い手が簡単に見つからないケースもある。その間、維持管理費ばかり出ていく。

 ただ、この旧体育館は、住民に親しまれてきただけに、売りっ放しというわけにはいかない。そこで業者に条件を付けた。住宅建設だ。それは市の「税収」にもつながる。市の試算では、そこに住宅が建設されれば10年間で固定資産税と住民税を合わせると、約1700万円の税収が見込めるという。

 

「損して得取れ」

 

 その後、北海道室蘭市も今年3月、マイナス入札を実施した。対象となったのは、旧総合福祉センターの建物と土地だ。市が業者に対し、881万円支払う。こちらも落札業者による解体が条件となっている。跡地には有料老人ホームが建設される。

 公共施設の老朽化問題は、全国どの自治体も抱えている。さら地にして売却できるような人気のある土地なら、さら地にすればいい。解体費も無駄にならない。

 ただ、そんなところばかりではない。買い手のつかない公共施設は、いたるところにある。その場合、マイナス入札を導入し、民間に解体してもらうのは極めて合理的だと思う。深谷市や室蘭市のように住宅や老人ホームに生まれ変われば、住民サービスにも直結する。

 人口が減少する今、従来の枠組みにとらわれるやり方を続けていては、一歩も先に進まない。「損して得取れ」。そんな気概をもった行政が求められる。

(ジャーナリスト 出町 譲)

 

(KyodoWeekly12月9日号から転載)

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