経済
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「陸海空の現場~農林水産」トランプ再選に向け国益無視で協力

 「令和の不平等条約」の声も上がる日米貿易協定である。

 正式署名を受け全体像が次第に明らかになるにつれ、不平等どころか、トランプ米大統領の再選に向け、要求されたらすぐ応じ、しかし求めるべきは求めず、両国間で極端にバランスを欠いた「隷属協定」の様相がはっきりしてきた。

 国益を無視してでもやみくもに従属する安倍晋三首相は国会の場で、野党の矛先をかわすのか。

 貿易協定が最終合意した9月26日(日本時間)、安倍首相は共同声明への署名後、「両国にとってウィンウィンの合意になった」と述べたが、日本にはウィンではないことは確かだ。

 なぜなら米通商代表部が「日本は約72億ドル分(7800億円)の米国産農産物への関税を撤廃し、市場を開放」と大喜びしたのに対し、日本政府は10月18日、「日米協定で農産物生産額は600億~1100億円減少する」との試算を発表しているからだ。

 意図的な計算が得意な安倍政権だけに信頼性が問われるが、大筋ではトランプ大統領が強調するように「米国農民の勝利」と、そして「日本の敗北」といえよう。

 この協定で米国産の競争力は著しく強まり、国産の牛肉(最大474億円)、牛乳・乳製品(同246億円)、豚肉(同217億円)などは軒並み大打撃を受ける。

 しかも、環太平洋連携協定(TPP11)では合意していた日本の自動車、関連部品の関税撤廃は、綱引き関係にある国産農産品をTPP並みに関税削減・撤廃で差し出したにもかかわらず実現できなかった。

 今回の交渉が何のための交渉だったのか。国民・農民を犠牲にしての「アベさんのヨイショ」にはあきれると言わざるを得ない。

 元農水省国際交渉官(TPP担当)の作山巧・明治大教授はある専門紙上で「最大の問題は日米間の譲歩が著しくバランスを欠いていること」と指摘する。全品目の貿易額でみた関税撤廃率でTPPと今回協定とを比較すると、日本は94%から84%に、米国は100%から57%へ半減。農林水産品目数でみた関税撤廃率は日本が82%から37%、米国は99%からわずか1%に激減した。明らかに日本の譲歩が米国より大きく「その背景には米国への過度な忖度(そんたく)がある」という。

 作山教授は米国が日本に執拗(しつよう)に今回の交渉を求めたのは、日本がTPP11を修正せずに発効させたためで、TPPに米国を復帰させようという「戦略が裏目に出た」ためとも述べた。

 農林水産省は国内農業への影響について「国内対策が十分効果を発揮し、国内農業の生産性が高まり、生産量も農家所得も変わらない」とする。だが国内対策もできていないのに、これで影響はない、という政府の言い訳は通るのであろうか。

 全国農業協同組合中央会(JA全中)はコメの輸入枠を設けなかったことに「生産現場は安心できる」(中家徹会長)と言うが、米国などを相手に長年、反対運動を繰り広げてきた猛者の言葉とも思えない。

 なぜなら共同声明に「協定発効後4カ月以内に次の協定のテーマを決める」とし、その上、日本の農産品の再協議規定として「米国が将来的な交渉で優遇を求める意思」が明記されているからだ。日本が今回助かったと思っている品目も、次なる「第2弾交渉」ではひどい目にあう可能性が、今の安倍政権では大いにあり得る、と思っていたほうがいい。

農政ジャーナリスト 小視曽 四郎(おみそ・しろう)

 

(KyodoWeekly11月4日号から転載)

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