経済
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死人に口なし―原子力マネー還流問題

 原子力発電が極めて危険で、放射能汚染などには十分な予防対策が必要であることは常識化している。これに対し、電力業界は対策に進んで取り組もうとしてこなかった。原子力規制委員会の安全規制に適合する工事の遅れはこれを象徴する。

 しかし、汚染のリスクはそれだけではないようだ。原子力発電所の周辺でも長期にわたって汚い金の流れがあることが、関西電力への「原子力マネー」の還流によって明白になった。関電は、故人となった元助役の強引なやり方に責任を押しつけている。「死人に口なし」ということで逃げ切れると判断しているとすれば、恐ろしい。

 もともと、個人が動かせる金額ではないし、発表されている3億2千万円相当の金品がいつからの累計なのかも曖昧なままである。原発立地自治体に対する補助金は長期にわたって交付されてきているから、さかのぼったらかなりの金額になるだろう。

 補助金がどのように使われ、どのようにして電力会社に利益をもたらしているか。電力会社の発注工事で、発注の見返りが常態化しているのであれば、これは重大な犯罪行為の疑いがある。いくら適正手続きに沿って発注していると主張しても、見返りの支払いの原資は工事費に含まれていると推測するのが自然だろう。

 同時に、国などの補助金による公共事業などに汚染は広がっていないのか。福井県高浜町のHPに掲載されている電源立地地域対策交付金事業報告では、2018年度に事業費への交付金充当額は21億円を超える。しかも、契約行為の大半が特命随意契約になっているようだから、同様の仕組みで不正な金の流れがあると疑いたくなる。

 関電との契約だけが特別だとすれば、それはそれでなぜ関電だけが特別扱いで、キックバックがあるかの説明がいるし、それがこの地域のやり方として定着しているのであれば、それは深刻な問題になる。

 さらに問題なのは、多額の補助金の交付によって、こうした汚染が原発立地地域では当たり前のことになっている疑いが生じることである。そうだとすれば、それは国の原子力行政の責任が問われる。

 菅原一秀・経済産業相は、今回の事案が明るみに出てから「報道が出るまで経産省またエネ庁(資源エネルギー庁)に全く報告がなかったこと自体が信じられない、言語道断の事態」と発言した。まるで後から聞かされたことが問題であるかのようだ。

 しかし、経産省が問題にすべきなのは、補助金の使途に疑いが生じることであり、その再検証が必要なことだろう。関電の問題に局限してふたをすることは許されない。それができないのであれば、原子力発電所という汚染源を全廃するのが最善策だろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly10月21日号から転載)

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