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「陸海空の現場~農林水産」令和の不平等条約か

 「令和」の不平等条約か。日米貿易交渉は予想通り、トランプ米大統領の再選戦略に全面的に協力する、環太平洋連携協定(TPP)超えという譲歩の様相が確実だ。その陰で日本国内の農業には警鐘を鳴らす〝シグナル〟が相次いでいた。

 8月上旬、農林水産省は二つの注目すべきデータを公表。2018年度食料自給率がカロリーベースで前年度と比べ1ポイント減の37%に低下した。これはコメの未曽有の大冷害となった1993年以来の史上最低記録だ。小数点以下までみてみると、昨年度は37・33%で93年度の37・37%を下回っており、1960年度の計測以来、過去最低となった。

 昨年は特に、全国的な農作物被害があったわけではない。食料自給力が大幅に弱体化し、万一の場合、国民に飢餓に近い食糧危機をもたらしかねないことを意味する。

 歯止めのかからない担い手農家の高齢化や、耕作放棄地の増加など生産基盤の弱体化があるが、基本的には政府が農家のヤル気マインドを引き出す政策の決定的な不足がある。

 例を挙げれば、旧民主党政権が実施し、好評だった10アール当たりコメ農家に1万5千円を支払う戸別所得補償制度の撤廃、コメの減反政策の廃止、日豪、TPP、日EU、そして日米間での農産物輸入の相次ぐ拡大、JA組織への脅しなどネガテイブな材料が後をたたない。

 さらに、49歳以下の若手新規就農者数が2014年以来5年ぶりに2万人を割ったことだ。他産業との人材獲得競争のあおりを受けたと政府は説明するが、ピントがずれている。新規就農を目指し、就農前や就農後に年間最大で150万円を交付する「農業次世代人材投資事業」の予算額が増えていないというありさまだ。

 経営次第で支援金返還の中間評価制度も導入し、就農意欲に水をさす動きが目立つ。実際、この制度を利用し、土地や資金を独自に調達し、就農した新規就農者は13%減の2360人と減少幅が最も大きかった。

 その上、農家の不安に追い打ちをかけるように先進7カ国(G7)サミット開催中に日米貿易協定の大枠が決まった。米国側は「農家にとってとてつもない合意」(トランプ大統領)「70億ドル超の市場を開くことにつながる」(ライトハイザーUSTR代表)と勝利を宣言した。

 米中交渉難航のあおりで行き場を失った飼料用トウモロコシを275万トン規模で買う羽目に。安倍晋三首相は「ウィンウィンな形で進んでいる」としたが、これを聞いた先の参院選で野党候補が当選した東北地方のあるJA組合長は「コメ価格を調節する飼料米生産と競合することにならないか」「TPPにもない余計な買い物で何がウィンウィンだ」と反発していた。

農政ジャーナリスト 小視曽 四郎(おみそ・しろう)

 

(KyodoWeekly9月23日号から転載)

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