経済
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軽減税率狂騒曲―こんなに分かりにくい税金

 10月からの消費税率引き上げによる景気後退を懸念して予定されている、軽減税率の実施が迫る中、持ち帰りと店内飲食との間や、商品の種類による適用税率が異なることに、小売店では対応に苦慮している。

 実際に動き始めたら消費者の方も大いに混乱しそうだが、こんなに分かりにくい税金は、税の制度として適切なものなのだろうか。

 政府の広報ページによると、軽減税率の対象は、飲食料品で、それは食品表示法に規定する食品を指し、酒税法に規定する酒類は除かれている。そして「外食」は含まれないという。

 食品表示法第2条は、「食品」とは、「全ての飲食物」と定義しているが、それでは飲食物の範囲は?と疑問が際限なくつながる。割り切って、食べ物と酒以外の飲み物は軽減を受けられると考えたとしても、外食に関わるややこしさは残る。

 店頭で混乱を避けるために、テークアウト可能ないくつかのチェーン店では、内外の価格差をなくす、そのために本体価格に差を設けるという対応が公表されている。客商売としては顧客のトラブルを避けることを優先せざるを得ないのだろう。

 しかも、軽減税率に対応する商品を販売する事業者は、レシートや領収書に標準税率と軽減税率とにわけて受領した消費税額を明記する必要があるという。そのために、小規模小売商が新しいレジの導入を容易にする補助金支給も実施されている。このレジの準備は、ぎりぎり間に合うようだという。

 しかし、制度への理解が徹底せずに、納税申告の錯誤に伴う調査が必要になることも多数に上るだろう。つまり、この制度は、消費者や事業者にとっては分かりにくく、手間暇がかかるし、徴税する税務署側は調査などの業務で追われることになる。

 そこまでして消費増税の影響を緩和することが必要なのか。混乱は不可避にみえるが、その混乱によって、増税のショックから目をそらすことができれば、政治的には成功かもしれない。

 軽減税率は、日用必需品などに対して税負担を軽くすることが低所得者層には意味があるという面はある。ただ、低所得者層に配慮するのであれば消費税ではなく、所得税の累進性を強めて、所得の多い人の税負担を増加するのが本筋だろう。

 社会保障などを中心とする国の仕組みを支えるために消費税などの増税が不可避であることは認めるべきだろう。しかし、年金などに老後の生活を依存する低所得者層に、年金制度の維持のための費用負担を求めるのであれば、使い道を限定した目的税にすべきだろう。

 政府は「100年安心」というが、社会保障制度維持のために給付削減以外の対策は講ぜず、安心の基盤は崩壊している。目先の軽減税率にごまかされるほど国民は愚かではない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly9月23日号から転載)

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