経済
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「はじめの一歩」~GAFA⑤ 彼らはどこに向かうのか

 グーグルやアマゾンなど、メガプラットフォーマーとしてデジタル社会に君臨するGAFA(ガーフア)。彼らを取り上げた書籍は数多いが、中でも最近の動き、今後の展望も含めて参考になるお薦めの5冊を本コーナーの最終回として挙げてみた。(「はじめの一歩」~GAFA④

 

評価軸の多様化

 

 2000~10年代前半に目立ったのは、グーグルを中心に、斬新で画期的なビジネスモデルを分析し、前向きに評価するものです。個性豊かな創業者たちのサクセスストーリーとして、あるいは飽くなき投資とM&A(企業の合併・買収)で市場支配を目指した経営論として、GAFA急成長の要因を解き明かすといった内容が多く見られました。

 一方、最近目立ってきたのはGAFAの光と影のうち、どちらかというと後者に焦点を当てて論評、解説するものです。個人情報やプライバシー保護、フェイクニュース対策などの社会的責任、競争政策や課税問題を巡る欧州連合(EU)との対峙(たいじ)、成長力の陰りと台頭する中国勢とのたたかい、といった「ポストGAFA」の行方を占う視点が強まるなど、その〝評価軸〟が多様化しているようです。

 

 ▼①「thefourGAFA四騎士が創り変えた世界」(スコット・ギャロウェイ著、渡会圭子訳、東洋経済新報社)

 私たちが同時代を生きているこのGAFAが支配する世界とは―。

 社会学的に、人類学的に、あるいは哲学的に同書は問いかけます。新約聖書の「ヨハネの黙示録」に登場する四騎士が剣、飢饉(ききん)、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威を与えられている」という挿話をGAFAに重ねながら、これほどの力を彼らに与えてしまった私たちの無防備な信任を問うてもいます。

 といっても決して説教じみた内容ではありません。4社の強さの源泉を明解に示しつつ、そこから得られる普遍的な法則と、GAFAの時代を生き抜く私たちの処世術、人生訓といったところに言及しています。

 大胆な比喩と皮肉たっぷりな文章は、経済書というよりライトノベルのような読みやすさがありますが、それはGAFAの本質を見極め、伝えるために筆者が極力、平易な言葉や表現を使っているからにほかなりません。

 

 ▼②「GAFA×BATH米中メガテックの競争戦略」(田中道昭著・日本経済新聞出版社)

 GAFAに中国の4社を加えた8社を取り上げ、比較分析を試みています。ネット通販ではアマゾン対アリババグループ、端末ではアップル対華為技術(ファーウェイ)、交流アプリではフェイスブック対テンセント、検索ではグーグル対バイドゥです。この4組8社のバトルはとりもなおさずポストGAFAの市場地図を占う対抗軸になるという見立てです。

 米中の4組8強に各サービスのシェアが二極化し、市場が分断される世界はどこへ向かうのか、データの世紀の「新冷戦」を期せずしてこの4組が具現化することになるのか、その政治的、社会的意味も問いかけます。

 中国の伝統的な戦略論である「孫氏の兵法」を参考に、五つの要素、つまり経営理念(道)、変化への即応性(天)、地の利(地)、リーダーシップ(将)とマネジメント(法)から分析している点もおもしろいです。

 

 ▼③「アレクサvsシリボイスコンピューティングの未来」(ジェイムズ・ブラホス著、野中香方子訳、日経BP)

 音声認識技術の発達と人工知能(AI)による学習機能の目覚ましい進歩が、ボイスコンピューティングという新たなビジネス領域に無限の可能性を与えている現実に光を当てた1冊です。

 それはGAFAのたたかいが早晩、パソコンやスマートフォンといった既存のデバイス、既存のプラットフォームを離れて、ごくありきたりな日常空間を舞台に、全く新しい様相を呈するであろうことを予感させます。

 言葉を発する、会話するという無形の、かつ人間にとってごく普通の行為は、マウスのクリックやタップといった動作にとって代わり、いずれ最も自然で負荷の小さいコンピューターへの指示となり得ます。それを可能にするのはクラウドコンピューティングです。どんな小さなデバイスも、マイクと無線LANチップを備えるだけで音声に反応でき、クラウド上の情報とつながれるわけです。

 第1章「ゲームチェンジャー」の中で著者いわく「機械装置の大半が実体を持たない遠い存在になり、周辺機器ではなく音声で動かせるようになると、コンピューターが物として存在する必要はなくなる」。まさにポストGAFAの世界を、ボイスコンピューティングが塗り替えてしまう近未来を示唆していて興味が尽きません。

 

「無料モデル」のほころび

 

 ▼④「グーグルが消える日LifeafterGoogle」(ジョージ・ギルダー著、武田玲子訳、SBクリエイティブ)

 本書はそんなポストGAFAの世界をプラットフォームビジネスの限界という観点から、最新のテクノロジーや数学の知見を織り交ぜて解説しています。 いまや「世界のシステム」となったグーグルですが、よって立つ「無料モデル」のほころびや、強まる一方の個人情報保護に、システム自体が対処できなくなりつつあると指摘します。ただ「情報工学と文明」に関する筆者独自の歴史観から説き起こす論旨は、かなり難解です。

 原書の副題に「ビッグデータの没落とブロックチェーン経済の興隆」とあるように、本書はプラットフォームビジネスが構築した、基幹サーバーに多数のクライアントがぶら下がる集中管理型ネットワークが早晩、行き詰まり、ピア・ツー・ピア(P2P)の分散型ネットワークがこれに代わるとしています。

 その代表選手がブロックチェーンです。「分散型台帳」などと訳されますが、ネット上の複数のコンピューターで取引の記録を共有し、互いに監視し合いながら正しい記録を鎖のようにつないで蓄積するデータ管理技術を意味します。ある社がデータを占有したりその果実を独占したりという発想はなく、その意味でGAFA後の世界を規律する基盤技術になり得るという主張が本書から読み取れます。

 

目指すべきルール

 

 ▼⑤「情報法概説第2版」(曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕著、弘文堂)

 一見すると、大学で情報・通信やセキュリティーに関する法体系を学ぶ授業で広く使う教科書のようですが、ビジネスマンとして手にとるなら、まさにGAFAに象徴されるプラットフォーマーを日本の法律はどのように規律し得るか、その考察の道筋と限界とを見定める体系的な手引書と言えます。

 インターネット社会は情報の流れを一変させました。表現の自由とこれを制限する大義、著作権の保護と利用のバランス、知る権利と人権や個人情報・プライバシーの保護(忘れられる権利)など、相反する価値観の衝突に対して、媒介者としてのプロバイダー(あるいはプラットフォーマー)はどのように振る舞い、どのような責任を負うのか、また社会として負わせるべきなのでしょうか。

 情報やデータの流通全般に関する刑事、民事の法体系の歩みを踏まえながら、最近のデジタル・ネットワーク化、さらにAI、IoT社会の進展がもたらすさまざまな現象を現行法にどう当てはめ、どう評価したらよいのか、どんな矛盾や不適合が生じているのかを考えます。

 そこから私たちが目指すべき社会のルールや、規範を導きだす道筋が見えてくるかもしれません。

[筆者]

日本経済新聞社・法務室

竹内 敏(たけうち さとし)

 

(KyodoWeekly9月16日号から転載)

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