経済
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「はじめの一歩」~GAFA④ 制裁に動き始めた各国政府

 グーグルやアマゾンなど、インターネット上で圧倒的な強さを誇るGAFA(ガーファ)。彼らの市場支配力に対して各国政府は「独占禁止法」を持ちだして制裁を科そうとしている。第4回は公正な競争を脅かすGAFAの断面と、私たちの暮らしとのかかわりに光を当てる。(「はじめの一歩」~GAFA③

 

5500億円

 

 Q GAFAが強くなり過ぎると、いわゆる独占禁止法に触れる可能性がありますか。

 A 欧州連合(EU)の欧州委員会は今年3月、グーグルに対して14億9千万ユーロ(約1900億円)の制裁金支払いを命じました。2006年から16年にかけて、インターネット広告事業でEU競争法に違反したとの判断です。

 具体的には、ユーザーが入力した検索語に連動して広告を表示させる仕組みのネット広告「グーグル・アドセンス」の運用に問題があったといいます。

 グーグルはさまざまな企業に「アドセンス」を提供していますが、利用先に対し①ライバル会社が配信する広告を掲載させない②グーグルが配信する広告を最も目立つ位置に掲載させる③ライバル会社の広告を掲載する場合、事前にグーグルの承諾を得る―などの条件を課していたのを問題視したようです。

 Q ライバルが公正に競争を挑めるような土俵は確保すべきだ、ということですね。

 A 実は欧州委がグーグルに対して制裁金を科すのはこれが3回目です。17年6月には、買い物検索で自社サービスを優先表示させ、競合サービスの順位を下げたとして約24億ユーロ(3100億円)を、また18年7月には、グーグルのスマートフォン向けOS(基本ソフト)を自社製検索アプリと抱き合わせで販売したなどとして、過去最高の43億4千万ユーロ(約5500億円)の支払いを命じています。

 また先ごろ、米国の司法省が反トラスト法(独禁法)の新たな運用方針を発表しました。これまでは主に「最終消費者が商品やサービスの価格の面で不利益を受けるか」を基準に運用してきました。しかし、競争を排除するような買収や合併はないか、イノベーションを妨げないか、競争の質を下げないか、といった観点からも審査するもので、明らかにGAFAを念頭に独禁政策を弾力的に拡大解釈しようという意図が読み取れます。

 Q 欧州委の買い物検索のケースで、グーグルは違反を認めて制裁金を支払ったのですか。

 A 過去2回の制裁金の命令については、不服だとしてEU司法裁判所に提訴しているようです。

 ただ、グーグルは19年1~3月期決算で、ネット広告事業に係るEUの制裁金17億ドルを計上し、大幅な減益となっています。いずれにせよ、ユーザーに支持されて高シェアを獲得することと、高シェアを背景にライバルをつぶすようなルールを作ることとは分けて考える必要があります。

 

「知の独占」

 

 Q そもそも、検索結果の表示順位を意図的に操作できるのですか。

 A グーグルの検索は自動処理されており、恣意(しい)的な操作はできない仕組みですが、検索のアルゴリズム(演算手順)の詳細は明らかにされていません。

 私たちは日ごろ何か分からないことがあると、気軽に「ググって」調べますが、ついつい1ページ目の上位に表示された数件だけをさっと読んでわかった気になっていませんか。ネット上にある無限の情報から、グーグルに与えられた「読む順位」を知らず知らずのうちに受け入れ、いつしか思考も価値観も画一的な「グーグル仕様」に染まっていませんか。また、どうかすると検索する言葉すら、サジェスト機能で表示される組み合わせを安易に選んでいませんか。

 こうしたグーグルの「知の独占」を許してはいけないと、欧州や日本で独自の検索エンジンを開発する動きが官民を挙げて進んでいます。

 日本が進める統合ポータル「ジャパンサーチ」への取り組みは、政府が先ごろまとめた「知的財産推進計画2019」にも20年の本格運用に向けた工程表が盛り込まれています。

 

優越的地位の乱用?

 

 Q 検索の「1強」独走を許した責任の一端は私たちにもあるのですね。一方、ネット通販でも、アマゾンなど強者のルールに出品者は逆らえないようです。

 A 日本の公正取引委員会が先ごろまとめた実態調査(調査期間2019年2~3月)が参考になります。「オンラインモールにおける事業者間取引のアンケート調査(中間報告)」によると、「規約を一方的に変更された」「不利益な内容があった」という回答がアマゾンについては7割前後ありました。ただ、日本の楽天市場はさらに高い9割以上の回答でした。

 また、運営事業者に出店・出品が承認されなかった場合、その理由の「説明はなかった」がヤフー・ショッピングで85%、説明があっても「納得できなかった」との回答は楽天市場69%、アマゾン66%などでした。

 Q 確か、アマゾンが通販で扱う全商品を対象に1ポイントを還元するとし、公取委が調査するという報道もありました。

 A 消費者には朗報でしょうが、還元の原資は出品者が負担するというルールで、アマゾンは今年2月に出品業者に規約の変更を通知していました。

 アマゾンの絶大な集客力の前に出品業者は抵抗しづらく、こうした不利益な規約の変更が優越的地位の乱用に当たらないか、公取委は調べています。

 また、今年4月、旅行サイトに表示されるプランで自社サイトでの料金が最安値となるよう、ホテル側に不当に要求したとして、公取委は楽天トラベルなど3社に立ち入り検査しました。これも仕入れ価格を不当に安くする「買いたたき」に似て、公正な競争をゆがめる行為と評価されるかもしれません。

 Q プラットフォーマーのサービス拡充は、消費者には有益なのではないですか。

 A 少数のプラットフォーマーがデータの囲い込みによってさらに強くなり、競争が制限されたり、結果として利用者の選択の機会が奪われたりといったデメリットにも注意を払う必要があります。

 一般ユーザーは使い慣れたサービスに個人情報を登録し、利用履歴やポイント、評判などを蓄積しており、ほかへ移りにくくなっています。

 これを「ロックイン現象」などと呼びますが、少なくともユーザーはこうしたデータを他社サービスに移転し、そちらで同じように使えるような仕組みを確保すべきだと、経済産業省は考えています。すでにフェイスブック、グーグルなどもこれに沿った対応策を発表しています。

 

デジタルの巨人

 

 Q 日本政府も、GAFA対策に乗り出しているのですか。

 A 6月21日に閣議決定した成長戦略実行計画には、デジタル市場の競争政策を検討する専門組織「デジタル市場競争本部」(仮称)を内閣官房に設置することを盛り込みました。

 また、プラットフォーマーと企業や個人の取引の透明性・公平性を確保する「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法(仮称)」を来年の通常国会に提出することも決まっています。いわゆるプラットフォーマー対策は世界各国の共通テーマです。

 GAFA封じに先鋭的な欧州、GAFA狙い撃ちには消極的な米国、それに追随しつつ自国に有利なルールを探る中国など各国の思惑が渦巻く中で、日本は皆の利害を調整する仲介者として存在感を発揮したいところです。

 それはGAFAのような超国家レベルのデジタルの巨人たちと、どう付き合うべきかという道筋を示すとともに、「データの世紀」を律する次代のルール作りを、参加者がいかに自国に有利に進めるかという攻防でもあるのです。(次回最終回はGAFA最新状況を理解するための読書案内を予定)

[筆者]

日本経済新聞社・法務室

竹内 敏(たけうち さとし)

 

(KyodoWeekly8月26日号から転載)

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