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「はじめの一歩」~GAFA③ 迫られる課税ルールの変更

 グーグルやアマゾンなど、インターネット上で圧倒的な影響力を持つGAFA(ガーファ)。デジタル空間で稼ぐ彼らメガプラットフォーマーに、各国政府が課税ルールの変更を迫ってきた。第3回は、時代の変化に追いつけずにいる「法人課税問題」の周辺を探る。(「はじめの一歩」~GAFA②

 

 Q GAFAに対して欧州などの国々が課税を強化しようとしていると聞きましたが。

 A 多国籍企業が税率の低い国に子会社を設け、そこに利益を集めて、グループ全体の税負担を軽減するといったことは以前から行われていました。

 法人税率を低く抑えて海外企業を誘致するという税優遇政策は各国の裁量ででき、欧州ではアイルランドやルクセンブルクといった国々がよく知られています。欧州委員会は以前、マクドナルドやスターバックスなどのグローバル企業の納税が適法か調査したことがあり、決して新しい問題ではありません。

 Q しかし、GAFAに対する各国財政当局の風圧はこれまでより相当強いようです。

 A 欧州委員会は2018年春、GAFAなど国際的なデジタル企業の税負担率は8・9%と、伝統的な国内企業の20・9%に比べ、大幅に低いとの試算を公表しました。

 従来の法人税は工場や支店などの拠点に所得をひもづけて課税する仕組みで、製造・販売といった物理的な施設を必ずしも持たないデジタルプラットフォーマーは課税の網をすり抜けてしまうと考えられるようになりました。

 しかも、GAFAのような企業の場合、そもそも収益の発生地がはっきりしません。事業基盤であるインターネットには国境はなく、彼らのホストコンピューターも恐らくいくつもの国や地域に分散していて、課税地を判別、特定するのは難しいでしょう。

 彼らの税負担率が相対的に小さいことはその分、利益は一部の大株主などに還元されやすく、各国が「不公平感」を募らせる要因と言えます。

 Q GAFAの節税というか課税逃れはどれぐらいの規模になると予想されますか。

 A GAFAに限らず、グローバル企業全体でみた法人税の課税逃れは年間5千億ドル(約56兆円)に上るという国際連合大学の調査結果があります。

 これはグローバル企業が巨額の脱税をしているという告発ではなく、企業の租税回避地(タックスヘイブン)利用が国家間の適正な税収配分をゆがめている実態に警鐘を鳴らすものです。データという無形資産をもとに国境をまたいで稼ぐGAFAの活動に、各国の課税ルールが追い付いていない現状を示しています。

 

見直しに着手

 

 Q 各国はどのような対策を講じようとしていますか。

 A 20カ国・地域(G20)と経済協力開発機構(OECD)が国際課税ルールの見直しに着手しています。

 折しも今年6月、福岡市で開いたG20財務相・中央銀行総裁会議での共同声明にも、経済のデジタル化に対応した新たな法人課税ルールづくりに取り組むことが盛り込まれました。各国は2020年の最終合意を目指して議論をすすめることになります。

 出発点となるのはOECDがまとめた作業計画ですが、基本的な考え方として、デジタルサービスの利用者がいる国に、現行より税収を多く配分する方向が示されています。具体案としては、①SNS(会員制交流サイト)などサービス利用数を基準とする英国案②企業のブランド力など無形資産を基準とする米国案③利用者のいる国の売り上げなどをもとに簡易に課税する新興国案―の3案が示されているようです。

 Q それぞれ提案国の思惑がからんでいそうで、うまくまとまるのか心配です。

 A そうですね。G20はそのうち一つを選ぶというよりは3案を折衷したような妥協点を探るのではないでしょうか。

 一方、OECDの作業計画は企業誘致を狙った法人税率の引き下げが行きすぎないよう、一定の歯止めとなる「最低税率」の導入案も盛り込みました。

 多国籍企業が低税率国に置いた海外子会社で計上した利益について、実質的な税負担率が国際社会の認める「最低水準」を下回った場合、本国でその分も上乗せして課税するといった案をもともとドイツとフランスが提案していたものです。

 このほかデジタルサービスの経営資源とも言えるデータの所在や収益への貢献度を課税対象として評価する「デジタル課税」構想もあり、2020年までの大枠合意を目指して協議が進む見通しです。

 これに先立ち欧州委員会では暫定措置として独自のデジタル課税(税率3%)を提案しましたが、低税率国の反発にあい、2019年3月までの決着を見送りました。

 

二重課税の問題も

 

 Q 課税ルール見直しの着地点は見えてきそうですか。

 A 英国や欧州連合(EU)はあくまでGAFAに代表されるデジタル企業に照準を合わせた新ルール導入を目指していますが、米国は自国の稼ぎ頭であるGAFAを狙い撃ちするデジタル課税には反対の立場です。

 GAFAを猛追する百度(バイドゥ)、アリババ集団などのIT企業を抱える中国の発言力が今後高まることも予想され、合意への道筋は見えていません。

 もっとも、協議が難航して合意が遅れる結果、各国がそれぞれ身勝手な制度を先行させてしまうと、整合性のないルールが乱立し、二重課税などの問題も生じかねません。

 今年のG20議長国である日本が2020年の合意を見据えて各国の調整役をどこまで果たせるか、力量が問われそうです。

 Q そのほか、インターネットの情報に「リンク税」が導入されるという話を聞きました。

 A EUが今年3月の欧州議会で可決した著作権法改正案のことですね。

 税金ではないので「リンク税」という呼び名は正確ではありませんが、グーグルなどのプラットフォーマーに対し、掲載したコンテンツに権利侵害があれば削除するよう、また必要に応じて権利者の許諾を得て適正な使用料を支払うよう求める内容です。加盟国が2年以内に国内法を整備し、2020年にも施行される見通しだと報じられています。

 

アンバランスに光を

 

 Q 情報の自由な流通こそが命であるインターネットの取り締まりを強化するのですか。

 A もちろん言論や表現の自由は保証されなければなりませんし、ユーザーが行う私的または非営利の利用やハイパーリンク、記事のごく一部の表示などは自由にできます。引用や批評・評論、風刺などの目的上、正当な範囲内で使う場合も許諾はいらないと解説されています。

 一方で、ネット上の情報流通にも規律は必要です。作家やクリエーター、アーティストらの間では、これまでネット上で流通する自分たちの作品から十分な対価を得られていなかったとの不満が強いのも事実です。

 プラットフォーマーはコンテンツの投稿、転載などの場を提供することによって多大な利益を得ているのに比べ不公平だとする考え方で、「バリュー・ギャップ」問題などと呼ばれています。改正法は、こうしたアンバランスに光を当てるものだと評価する声があります。

 Q 私たちネットユーザーも今後、コンテンツを視聴する対価を支払う必要があるのですか。

 A プラットフォーマーが今後、必要になる権利処理コストをユーザーに転嫁するのは筋違いだと思います。企業としての社会的責任を果たしつつ、サービスの品質を向上させ、ユーザーの支持をつなぎ留めるための経営努力を静かに見守りたいです。(続く)

 

[筆者]

日本経済新聞社・法務室

竹内 敏(たけうち さとし)

 

(KyodoWeekly7月22日号から転載)

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