経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

「はじめの一歩」~GAFA② 危うさはらむデータの独占

 グーグルやアマゾン・コムなど、インターネット上で圧倒的な存在感を誇るGAFA(ガーファ)。IT(情報技術)社会に革命をもたらした四騎士とも呼ばれる彼らには、ここにきて厳しい批判も聞こえ始めた。第2回は「データの独占がはらむ危うさ」を解き明かす。(「はじめの一歩」~GAFA①

 

 Q GAFAによる利用者の個人情報の独占が進んでいるといいますが、具体的にはどういう問題が起きていますか。

 A わかりやすいのはフェイスブックですね。多くの人が実名と顔写真のほか、所属する企業名や学校名、友達、趣味やサークル活動、住んでいる町などを開示しています。ユーザー数はいまや全世界で23億人。「公開」の範囲を限定できるとはいえ、一民間企業が世界最大の個人情報ネットワークを運営していると言えるかもしれません。

 Q 2016年の米大統領選でフェイスブックの個人情報が悪用されたというニュースがありました。

 A 英ケンブリッジ大学の教授が2013年、フェイスブックのユーザーにあるアンケート調査をしました。クイズアプリをダウンロードさせ、これに回答した約27万人、友達を含めると最大8700万人分の嗜好(しこう)や行動に関するデータを入手したようです。教授は規約に違反し、ある英国の会社にデータを横流ししました。同社は個人データを使って有権者の行動に影響を与える仕事をしており、米大統領選でトランプ陣営がこれらのデータで選挙戦を有利に進めた可能性が指摘されています。

 Q 悪いのはその教授であって、フェイスブックの責任ではないのでは。

 A もちろんフェイスブック自身が個人データを流出させたわけではありません。しかし悪意をもった人物が利用目的を偽って膨大な個人データを入手し、ほかの組織に提供できてしまう管理体制の甘さに批判が集まりました。2018年4月、米議会公聴会に呼ばれたマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「プライバシーを十分に防衛してこなかった。私の過ちだ」と謝罪しました。

 その後も同社ではハッキング被害やソフトウエアの不具合などによる個人情報の事故が相次ぎました。ユーザーがあずかり知らないところで個人情報が拡散し、転用される怖さ。それはプライバシーの問題に加え、SNSの情報が操作され、それが政治や選挙をも動かしかねない、つまりは民主主義をも脅かしかねないことを意味します。

 Q フェイスブックはどんな対策を打とうとしていますか。

 A シリコンバレーの本社に投稿コンテンツを監視する対策室を設置し、偽ニュースや情報流出などに備えています。事故対応には、以前の2倍の約2万人のスタッフを配置し、セキュリティーを強化する設備投資も拡大する方針です。

 無料で利用できるフェイスブックは、収益のほとんどを広告収入に依存しています。登録情報のほか、投稿の内容、掲載した写真、GPSによる位置情報、「いいね!」など他人の投稿に対する反応に至るまでコンピューターで解析して、その人に最適と思われる広告を配信する「ターゲティング広告」がビジネスモデルの生命線です。

 ただ、ターゲティングの精度が上がるほど個人が特定され、日常的な行動や、もしかすると自分自身も気づいていない潜在的な嗜好も含めてセンシティブな情報が流通してしまいます。プライバシーや人権などへの配慮から、今後はこの運用も見直す方針といいます。

 Q 個人データの管理については、欧州連合(EU)が新しいルールをつくりましたね。

 A 2018年5月に施行した一般データ保護規則(GDPR)です。これはまさにGAFAに象徴される米国のIT企業が「欧州を含む全世界から個人データをかき集め、好き放題に利用して稼ぎまくっている」と、少なくともEUには見えてしまうような実態に歯止めをかけるのが狙いです。

 もともと欧州では、ナチス・ドイツの差別と迫害の歴史の記憶があって、個人の人権保護には極めて神経質な土壌があります。今回のGDPRは自分のデータを所有、管理する権利は個人にあると明確に位置付けたのが特徴で、加盟国の個人データについて違反があれば、加盟国以外の企業にも莫大(ばくだい)な制裁金が科されます。まさにGAFAを念頭に置いた措置といえます。

 Q GDPRは実際のところ発動されているのですか。

 A フランスのデータ保護機関が今年1月、グーグルに対し、個人情報利用の合意をユーザーから得る手続きが不適切だったなどとして、5千万ユーロ(約62億円)の制裁金を科すと発表しました。報道によれば、グーグルのOS(基本ソフト)「アンドロイド」を搭載したスマートフォンを初期設定する際に、個人情報利用の説明が不親切だと問題視したようです。

 Q 身近な話題では人工知能(AI)を搭載したスピーカーが、ユーザーの会話を録音していると聞いたこともあります。

 A 「テレビをつけて」「明日の天気は?」などと声を掛けると、音声認識により内容を理解し、答えてくれるスピーカーですね。アマゾンの「アレクサ」を搭載したスピーカーがユーザーの会話を聞いていて本部に送っているのは盗聴ではないかと物議を醸したことがあります。

 AIが応答の精度向上のために会話を録音して学習することは、アップルのSiri(シリ)などでも行われているのですが、説明が十分でなかった可能性はあります。「いかに良質な音声データを集めるか」という命題のため、GAFAは私たちの居間や寝室にもアンテナを張っているのです。

 Q 個人情報は保護が行き過ぎると、逆に不自由な面もあります。適切な利用ルールとのバランスが重要なのでは。

 A 20世紀の産業の主役であった石油に代わり、21世紀はデータがビジネスの基礎となります。しかも、ネットという「場」に情報や仲間を求めるユーザーはより規模の大きいコミュニティーを志向する傾向がありますから、一極集中が起きやすいのもこのデータビジネスの特徴です。いわば一握りの勝者が総取りする苛烈な競争をGAFAは勝ち残ったわけですが、それがもたらす負の側面にEUなどが厳しい制裁ルールで立ち向かい始めたといえます。ユーザー自身、GAFAに個人情報を預ける便利さと、その代償として抱えるリスクをきちんと理解する必要がありそうです。

[筆者]

日本経済新聞社・法務室

竹内 敏(たけうち さとし)

 

(KyodoWeekly7月1日号から転載)

PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ