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「陸海空の現場」日米密約は「TPP超え」か

 

 令和初の国賓として即位間もない新天皇との会見、ゴルフ、大相撲観戦、高級居酒屋での飲食など、今回のトランプ米大統領の訪日は、国内外メディアの注目を集めた。

 「おもてなし」が効いたのか、効かなかったのか分からないが、日米貿易交渉の密約を大統領自らが明らかにしてしまった。「なぜ参院選後の決着なのか。選挙前には言えない内容なのか」。農業関係者だけではなく不安が高まった。それは「ひょっとしたらTPP(環太平洋連携協定)を超える(水準での)譲歩ではないか」などと、永田町に激震が走った。

 トランプ氏のツイートによれば、日米貿易交渉の決着について「(夏の)参院選までは交渉の多くのことで取引を待つ」とし「日本との貿易交渉は大きく進展している。農業や牛肉は特にそうだ」と表明した。

 安倍晋三首相はこの間のトランプ氏との付き合いで、どんなゴマスリやヨイショをしても通用しないことを熟知。生半可な水準ではかわしきれない、と弱腰姿勢はミエミエだった。 

 しかし、農産物交渉で安易に妥協した場合、参院選の農業地帯の多い1人区で大きな痛手を受けかねない。それだけに決着の時期だけは、参院選後にこだわったようだ。

 今回のツイートで、トランプ氏の頭にある「大きく進展」とは何なのか。ズバリ「TPP超え」の関税削減だ。昨年末の11カ国でのTPP発効、今年2月の日欧経済連携協定(EPA)発効で牛肉や豚肉などの輸入が急増。米国産のシェアが侵食される懸念が高まっている。

 2018年度の日本の牛肉輸入は61万トンに迫り、うち豪州産50%、米国産40%とこの2国で大半を占める。米国側はシェアを脅かされないよう事態の改善に向け、何らかの特別措置を求める可能性もある。

 昨年9月には日米共同声明で「農産品の市場開放水準は過去の経済連携協定が最大限」とする、事実上TPPを超えないとする約束があった。だが、今年5月27日の日米首脳会談後の共同記者会見で「TPPとは関係ない。何も縛られていない」とトランプ氏が指摘した。

 野党も「密約があったとの前提で選挙の争点にせざるを得ない」(立憲民主党の枝野幸男代表)と、ようやく戦闘モードに入った。

 参院選32の1人区で、野党共闘がすべて決まった。「密約での大幅譲歩を止めるには、選挙でガツンと意思表示をするしかない」(農民団体)との声も出ている。

 そもそも「日米2国間交渉には応じない」としてきた安倍首相の方針は完全にほごになり、その上、「TPPを超えない」についても、ウソとなるのも時間の問題なのかもしれない。

農政ジャーナリスト 小視曽 四郎(おみそ しろう)

 

(KyodoWeekly6月24日号から転載)


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