経済
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不都合な真実―水産物輸入禁止問題

 

経済産業研究所のホームページ画面

 縁があって経済産業省の所管の独立行政法人経済産業研究所の研究活動を手伝っている。その研究所から先日、研究所のホームページ(HP)に公表した研究成果に関する取材についての注意喚起のメールが突然、届いた。要点は、発表した研究成果は、「執筆者個人の責任で発表するものであり、経済産業研究所としての見解を示すものではない」ことを、取材対応に際して明確に伝えることであった。

 執筆者個人の見解であることは、以前から研究所の研究活動発表のルールとして確認されてきたことだから、今さらながらの注意喚起をいぶかっていた。その答えが4月23日の朝日新聞1面の報道にあった。

 記事は、韓国による東京電力福島第1原発事故の被災地などからの水産物の全面禁輸を事実上容認した、世界貿易機関(WTO)の判断を巡る日本政府の説明に疑問があることを指摘していた。

 WTO上級委員会が「第一審」の判断を廃棄したことに対して、菅義偉官房長官は記者会見で「敗訴したとの指摘は当たらない」と強調し「日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている」と主張していた。

 ところが、この「事実認定」に関する記載が「第一審」の報告書には見当たらないことを指摘したリポートが出された。その発信源が経済産業研究所のHPであり、新聞記事では、「『身内』なはずの経済産業省所管のシンクタンクも問題視するリポートを出した」と伝えた。

 この報道の仕方には問題があるが、リポートは国際通商法の専門家による学術的にも尊重すべきものだ。その専門家が指摘した問題点とは、韓国の安全基準に則した安全性の判断は「第一審」では行われていなかったこと、それ故に韓国の基準に則して日本産食品の安全性が認められたわけではないということである。

 日本政府はこの事実を認めようとしていない。敗訴を受け入れるわけにはいかないのだろう。原発事故の影響は完全にコントロールされている、と言明して東京五輪・パラリンピックを誘致してきたのだから、安全性に疑義が生じるのは認めがたいのだろう。

 だから、このリポートは「お上」のご意向にたてついて「不都合な真実」を暴露したものと受け止めたに違いない。周知されているルールについて改めて注意喚起したのは、そんなご意向を忖度(そんたく)したものと合点した。もちろんこれは「個人的見解」だ。

 このリポートは「安倍政権に被災地復興のために日本水産物の販路を拓(ひら)かんとする真に強い思いがあれば」「政権中枢には今回の結果を正面から受け止めてほしい」と求めている。安倍政権がなすべきことは、リポートを個人的見解として無視することではあるまい。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly5月13日号から転載) 


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