経済
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ロボットのリストラを考える―AIの可能性と限界

 長崎県佐世保市のテーマパーク・ハウステンボスに隣接して2015年に開設された「変なホテル」は、「ロボットが初めて従業員として働いたホテル」とギネス世界記録に認定された。フロントでは多言語対応のロボットたちがチェックイン・チェックアウトの手続きを行うなど、先端技術を生かしながら、機械的ではない温かみを感じるおもてなしを目指していた。

 その「変なホテル」でロボットに「リストラの嵐」が吹いていると報じられた。定型的業務であればともかく、宿泊客の多様な質問に応答することが難しかったからだという。

 もちろん、学習型の人工知能(AI)がさまざまな分野で活用が期待されている現状を考えれば、ロボット従業員の限界面だけをあげつらうのは公平ではない。このホテルの運営会社は「変なホテル」を21年には沖縄本島や離島にも展開すると発表しており、事業は順調に見える。おそらく、新しい能力を持つロボットが投入されるのだろう。

 人手不足の時代であり、宿泊業は外国人材の受け入れを認められた「特定業種」の一つである。外国人材に求められる特定技能をロボットが代替できるのかという社会実験が行われてきたとみることもできる。そして、現段階ではまだ改良の余地があり、実用性には課題があるということなのだろう。

 AIに期待し過ぎて、何でもできると思い込んだことが壁になった可能性もある。変なホテルのコンセプトから宿泊客が万能的なロボットと思い込んでいたために、期待が外れて「役立たず」と評判を落とし、退場に追い込まれたのかもしれない。

 生産現場の自動化に際して、熟練した技能をAIに覚え込ませる試みでは、定型的な作業の自動化、ロボットによる代替は容易だが、非定型の異常発生時の対処についてはハードルが高かったといわれている。

 異常時には、人間の力が持つ柔軟性や対応力も捨てたものではないということだろう。24時間営業の存続が問題となっているコンビニ業界では、セルフレジの導入などの自動化による営業時間の継続と従業員の労働負担の軽減の両立も打開策の一つとして検討されている。

 しかし、これも定型的な業務だけであれば良案だが、機械の不具合などの異常時を想定して対応する人員を1人は確保する必要がある。状況に応じた判断力や問題の解決力は人が教育や経験を通じて培ったものである。 そこにイノベーション(技術革新)の源泉となり、未来を開く基盤となる力がある。疑惑の「説明」をする政治家や高級官僚のように「記憶にございません」と繰り返すだけであれば、人間力は必要がない。いざという時の対応力はロボットには負けないと断言できる政治家は何人いるのだろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly4月22日号から転載) 


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