経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

独禁法と国際競争力

 経済活動のグローバル化に伴い、各国の競争法当局が、外国企業を対象として国際カルテル案件などで積極的に調査を行い、制裁金を科す事案が増加中だ。独占禁止法(独禁法)の調査事案は国境をまたぎ、各国当局による調査の国際協力が行われている。

 このような中、独禁法の執行において、手続き保障について、国際的な整合性があることが重要である。企業の国際競争力に影響するからだ。

 日本では、手続き保障の核である、弁護士と企業の間の通信秘密を保護する弁護士・依頼者間秘匿(ひとく)特権(秘匿特権)が認められていない現状にある。

 この権利は、欧米、オーストラリアはもとより、新興国の中にも認めている国がある。

 権利保護がない日本企業は、弁護士の適切な助言を受けられないことで、他国企業と比べ不利な状況で、国内外の調査事案や訴訟案件に対処しなければならない状況にある。

 例えば、米国の民事訴訟では外国企業の母国において秘匿特権が保障されていない場合、証拠開示の対象になる懸念がある。日本の独禁法の手続き保障の不備が、日本企業の海外での事業活動に悪影響を及ぼしているといえよう。

 独禁法の手続き保障の不備は、海外から日本への投資拡大を目指す日本の成長戦略にも影響する。海外企業が日本で事業活動を行う場合、手続き保障で他国と比較して不利益を被る可能性があってはならない。企業が国を選ぶグローバル社会では、投資の障害ともなりうる。

 秘匿特権については長年、経済界や法曹界から公正取引委員会(公取委)に対して権利化を求める要望が行われてきた。

 公取委は、実態解明の妨げになりうるという懸念から、手続き保障に慎重であったが、与党や各界の要請を踏まえ、認めることに転換した。

 今年3月12日に独禁法改正法案が閣議決定の上、今国会に提出された。この改正法案は、調査協力インセンティブを高める課徴金減免制度の改正を内容としているが、改正法の施行と併せ、規則において秘匿特権を実質的に認めていくとしている。

 

大きな課題

 

 経済界などが求める長年の懸案が前進したものとして、高く評価したい。公取委は改正法成立後、速やかに独禁法の規則において秘匿特権が認められていることを、明確かつ具体的な形で、その内容を海外に向けて発信してもらいたい。

 今後、適用対象を「不当な取引制限」(カルテル、談合)に限らず、対象を拡大することや犯則手続きにおいても保護されるよう、さらなる検討が行われることを求めたい。

 独禁法の手続き保障に関する、残る大きな課題は調査事案関係者に対する、供述聴取手続きにおける防御権の整備だ。欧米などで認められている供述聴取時の弁護士の立ち会いはもとより、供述聴取過程の録音・録画といったことが認められるべきだろう。少なくとも任意の供述聴取においては、早急な改善が必要ではないか。

 今回の独禁法改正案の国会上程に当たり、公取委は事業者と当局が、対立した関係ではなく、同じ方向を向いて協力し、違反行為を排除する考えを示している。そうであるならば、密室による供述聴取に依存した調査から脱却し、報告命令をより活用すべきだ。

 企業側は、仮に独禁法違反の疑いが生じた場合には、第三者の目も入れて徹底した内部調査を実施し、当局に協力しながら事案の実態解明を進めていくことが重要であり、手続き保障がそれに資するものとなる。

(アジア太平洋研究所 主席研究員 藤原 幸則)

 

(KyodoWeekly4月8日号から転載) 

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