経済
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「敗北」の時代を超えて 小林氏、「Japan2・0」を提言

 (株)共同通信社主催のきさらぎ会東京3月例会で、経済同友会の小林喜光代表幹事が、戦後100年となる2045年に向けた提言「Japan2・0最適社会の設計―モノからコト、そしてココロへ―」と題し講演。平成の日本は、世界の大変革の波に乗り切れず「敗北の時代」だったとした上で、日本をバージョンアップさせるために「多様性に富み持続可能な社会の実現に向けた取り組みを今、始めるべきだ」と訴えた。以下は講演の抄録。近著にこの提言をまとめた「危機感なき茹でガエル日本―過去の延長線上に未来はない」(中央公論新社)がある。(編集部)

 

 今、なぜJapan2・0か。日本が今、相対的にかなり劣位になっているのに経営者自身が気付いていない。政治を含め今さえ良ければという現在の風潮で本当にいいのか。国家100年の計として、どう設計をしていったらいいのか、今、バージョンアップしなければならない日本という意味で、Japan2・0という名前を付けた。

 戦後100年を迎える2045年ごろの日本はどうあるべきかを想定した。東京五輪・パラリンピックが開かれる20年ごろまでには準備を完了しないと、日本は立ちゆかなくなるのではないかという危機感からの問題提起だ。

 

平成は「敗北の時代」

 

 あるパーティーで突然、マイクを向けられ「平成30年を総括してください」とインタビューされた際、反射的に「敗北の時代」と言った。何を言っているのだ、とお叱りも受けたが、これを敗北でなくして何を敗北と言うのだと、逆にそこに理屈付けをしたいと考えた。平成の30年間で、日本がいかに相対的に劣位になったか、いろいろ資料を集めた。

 30年前、世界の時価総額ランキングで日本企業は、7社が10位以内に入っていた。しかし、今年1月には、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と、ほとんどが米国と中国のプラットフォーマー(※)になってしまった。

 平成の30年間というのは、ドラスチックに比較劣位になってしまった。テクノロジーではそこそこに勝ったが、事業ではほとんど敗退している。半導体、DVD、光ディスク、液晶パネル、カーナビしかり。リチウムイオン電池さえ、あっという間に負けてしまった。

 世界は今、人類が経験したことのない大変革期にある。モノが潤沢になり、コンピューターがここまで発展し、データがすべてを制する時代に入っている。将来、量子コンピューティング的な新しいテクノロジーが入ってくると、コンピューターが人間を凌駕(りょうが)するといった知のレベルだけではなく、感情まで入ってくるようなテクノロジーが検討されている。

 怖いのはデータを国家管理し、センサーですべての情報を集めることが可能な時代。そうなると一握りのエリートと無用者階級という、超格差社会のディストピア(反ユートピア)が、誕生してしまうだろうという議論もある。

 グローバル化と並行して、コンピューターをベースにしたデジタル化や、その先のAI(人工知能)化が進む。そういったツールを使ったSNS、メディアそのものの情報伝達の形も変わってきている。これはソーシャル化と言えよう。

 この三つの大きな変革のうねりをまともに受けると、それぞれの関係性も変わってくる。

 例えばモノというリアルと、サービスとしてのバーチャルの関係性は、バーチャルに傾いてきている。付加価値と効用をGDP(国内総生産)だけでは測れなくなり、人々の幸福度と直接的な関係がなくなっている。ソーシャル化によって、情報を均一に取れるようになってくると個と集団の関係性も変わってくる。

 今までわれわれはモノを中心に考えてきたが、左脳だけならず、バーチャルの世界も含めてコト、右脳、感性まで移行してきている。ココロの時代に対して、経済的に、かつ政治的にどう対応していくかが最大の問題になっていくのではないか。

 最終的に45年に目指すべき姿は何か。先ほどの超格差社会のディストピアにならないために、公正な分配と適正な競争がある社会という一つの理想、ユートピアを考えることではないか。

 具体的に見ると、労働市場であれば、多様な働き方と同時に雇用の流動性、外国人材の問題を、教育では大学のガバナンス(組織統治)を中心に今、他国との競争力が弱っていることを受けて、教育と研究の部分をどうしていくのかを、社会保障では、データヘルスも含めた給付と負担の見直しの問題をそれぞれ考える。

 財政では既に何回も提言しているが、消費税率は、10%は言うに及ばずで、10%プラスを議論していかないと、日本の財政はもたないだろうという問題が待ち受けている。

 

「DoTANK」

 

 最後にダイバーシティ(多様性)に富む持続可能な社会を、経営者としてどう進めていくか。そこで、10の経営者宣言をつくった。

 人の関連では多様な個の活躍、インクルーシブ(排除しない)な社会の構築、あるいはグローバル化、デジタル化により激しく変革する時代を生き抜く人材の育成などだ。企業が生き延びるためにはイノベーションの創出力の強化と、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)へのダイナミズムをどうつくっていくか。地球環境、企業、国のガバナンス強化なども常にチェックしながら進んでいこうという内容だ。

 今後これをどうモニターしていくか。櫻田謙悟・次期代表幹事(SOMPOホールディングス社長)も「シンクタンクからDoTANKへ」と言っておられるので期待したい。

 ※検索や通販、会員制交流サイト(SNS)、スマートフォンの基本ソフト(OS)などインターネットサービスの基盤(プラットフォーム)を提供するIT企業。

 

小林喜光氏(こばやし・よしみつ)2015年三菱ケミカルホールディングス会長。同年4月から経済同友会代表幹事。山梨県出身。理学博士。

 

(KyodoWeekly4月8日号から転載) 

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