経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

便利さの裏側にあるもの―経済力乱用の疑い

 中国系電子決済の大規模なキャンペーンが話題を呼ぶほか、消費税増税対策として電子決済に対するポイント還元など、情報通信技術を活用したサービスが話題になっている。

 旅をするときに、検索サイトを利用して宿泊先や交通手段の予約などをすることも日常的になってきた。利便性の高さが利用者を引きつける理由であることは間違いない。

 しかし、この利便性の裏側で起きていることにも注意を払う必要がある。大手通販サイトのサービス競争の結果、宅配業者が疲弊し、運送賃の値上げを求めなかったことは記憶に新しい。

 24時間営業のコンビニエンスストアが人件費の高騰と人手不足で営業の継続が難しくなって、時短を計画したところ、多額の違約金を請求されたとのニュースが流れたのも、利便性の裏側にあるブラックな経営の問題性が明るみに出た。圧倒的に交渉力があるコンビニ運営の本部が零細な小売店舗の経営者に突きつける条件の独善性は、経済力の乱用に当たるのではないかと訴えたくなる。

 しかし、これは可視化されただけましだろう。例えば、検索サイトが徴収する手数料も一方的に決められている。アマゾンの通販では10~15%が通例であり、宿泊予約サイトでは8~10%、この基本手数料にポイント負担分として1~2%が徴収されている。

 この手数料水準が妥当かどうかを判定することは難しいが、明確なことは、販売業者・宿泊業者など通販サイトに受注を頼る事業者にとっては交渉の余地がないことである。しかも、利用者へ還元されるポイントまで実は業者が負担しているという。ポイントの原資を提供しても、利用者がその販売先・宿泊先を再利用する保証はない。ここにも経済力乱用の疑いがある。

 便利な検索サイトの通販は、こうして実質的な負担を転嫁している。価格競争が激しいために、こうした負担は販売価格や宿泊料に上乗せすることはできないし、販売拡張のためにサイトの活用を停止することも難しいから、業者は身を削ってこの負担に耐える以外にない。

 こうした関係は、結局そうした事業者の雇用条件などにも跳ね返り、消費の抑制から、過度な価格競争へとつながる悪循環になる。便利に見える仕組みにはこのような落とし穴がある。

 消費増税対策のポイント還元は、業者いじめにはならないらしい。政府が負担すると明言しているからである。しかし、この太っ腹な態度にだまされてはいけない。なぜなら政府の負担とは、税金が原資になるということになるからだ。消費者の購買意欲を促すためのポイント還元の負担は、納税者でもある消費者に転嫁される。このことに気が付けば、この対策のばかばかしさが分かるだろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly3月25日号から転載) 


PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ