経済
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組織の〝けじめ〟考える―最終責任者はだれ?

 3月は受験生が一喜一憂する時期であり、多くの上場企業が決算期を迎え、1年の業績が公表され、経営の成果が問われる。

 大学の医学部の合否判定に現役生・男子受験生優先などの恣意(しい)的な判定基準によって、合否が操作されたことに厳しい批判が浴びせられ、是正が求められた。今年の入試では、そんなおかしなことは起こらない、と願いたい。

 企業の業績でも本来の成績が改ざんされ、公開情報が操作されていれば大問題となる。業績をよく見せようとするための経理操作は重大な犯罪行為である。

 不正な操作が行われた時、大学であれば学長の責任問題になるし、企業業績であれば経営トップの社長などの責任が問われ、辞職することになる。

 そうした不正がトップダウンの指示によるものであればもちろんだが、たとえ部下がトップの意向を忖度(そんたく)して不正を働いただけだとしても、組織として最終的な責任を取るのは、その組織の最高責任者である。それが日本の社会で、さまざまな事件の中で共有された常識的な組織の〝けじめ〟のつけ方だろう。

 ところが、この常識が日本では通用しない組織が存在する。それが安倍晋三内閣である。

 統計に関わるさまざまな不正が問題になる中で、野党の追及は、安倍首相の指示があったかどうかに焦点を絞っている。

 しかし、このような追及をしたとしても、不正操作を担当者の判断によるものと責任を押しつけるのが常套(じょうとう)手段になっている。そんな責任の自覚がない現政権が真相を語ることはないだろう。

 野党の追及は、政権中枢部の指示によるということを論戦によって印象づけることにあるかもしれない。ただ、世論の批判が多少強まったとしても、沖縄での辺野古移設問題に示された民意に対して、ひとかけらの敬意も、配慮もする気のない政権には、何ら痛痒(つうよう)を感じることはないだろう。国会論戦では真剣に答弁せず質問を聞き流し、論点をすり替え、時間切れを狙う考え方が明白である。

 経済統計は、経済政策の成績表である。その統計数値が、統計の正確さを確保するためのテクニカルな修正を必要とすることはあろう。しかし、その結果が統計データの連続性を毀損(きそん)し、成績表として欠陥が生じていることは間違いない。改ざんされた成績表を根拠として、アベノミクスの成果を誇ってきた安倍首相は、恣意的な判定基準で合格した受験生と変わりない。

 データ不正に関与していない、隠蔽(いんぺい)はないと言いつのるのであれば、安倍首相は、アベノミクスが想定した成果を上げていないことを率直に認めて、責任をもって政策の見直しをする以外にはない。そうでなければ、不正の責任を取ってその地位から退くべきだろう。もっとも、彼らの辞書には責任という言葉はないのかもしれない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly3月11日号から転載)


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