経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

原子力発電のミライ―財界総理の責任

 1月15日、中西宏明経団連会長は記者会見で、原子力発電について「再稼働をどんどんやるべきだと思う」語り、原発の「新設」や「増設」も認めるべきだと強調した。経団連サイドの説明によると、この発言は、年頭の報道各社インタビューで「国民が反対するものはつくれない。反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダーが無理につくることは民主国家ではない」と発言したことが、原発に慎重な姿勢を示した、と受け止められる向きもあるということで「真意」を説明するためであったという。

 豹変(ひょうへん)にも見えるこの態度について、首相官邸からの圧力という見方が流れた。真偽のほどは分からないが、菅義偉官房長官が会見で記者の質問に丁寧に答えなかったり、記者クラブに対する脅しとも思える文書を送ったりする政府であれば、圧力もあり得るかもしれない。

 最近の数々の疑惑についても、十分な調査もせず、事実に基づいた説明を放棄してきた政府が、質問者に事実の正確な確認を求めるという一方的な態度からみると、それくらいのことをやりかねないと思える。そんな状況にあることが恐ろしい。

 中西会長の出身母体である日立製作所では、中西会長自らが推進してきた英国原発プロジェクトを凍結した。この方針は昨年12月17日に中西会長自らが「民間の投資対象としてはもう限界だと英国政府に伝えた」と説明しており、今年1月17日に日立製作所は原子力発電所建設計画の凍結を正式に決定した。

 理由は「民間企業の経済合理性」からみて事業の継続は不適切と判断されたからである。安全確保などの措置のために経費がかさんだことが要だから、このようなコスト高は、既設の原発にも共通する問題だろう。

 この日立製作所の決定と、年頭の中西会長の説明は平仄(ひょうそく)が合っているから、その「真意」に一貫したものがあるとすれば、「国民の反対する」原発はもはや民間企業ではつくることも再稼働することもコストが高く採算が合わない。

 従って、政府が原子力政策について先頭を切り、多額の予算を投入して推進する以外にはない。そうした取り組みを前提に民間企業が手伝うことがあるかもしれないということなのだろうか。それにしては「再稼働はどんどんやるべきだ」というのは乱暴な言い方だろう。

 かつて財界総理とよばれた経団連会長は、民主政治と自由主義経済体制を守るために、時に政権与党に国会運営などについて苦言を呈し、経済政策でも環境政策でも独自の視点で意見を具申してきた。中西発言にはそうした力強さはない。経済界が自らは不採算と判断する原子力発電推進を支持するのであれば、何をどのようにすればよいかという具体案を提案するのが、財界総理としての責任だろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly2月25日号より転載)

PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ