経済
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デジタルの力で未来社会を創造 ソサエティー5・0で中西会長

中西 宏明氏(なかにし・ひろあき) 米スタンフォード大院修了。1970年日立製作所入社。2010年社長。14年4月から会長。18年5月から経団連会長。横浜市出身、72歳。

 (株)共同通信社主催のきさらぎ会東京1月例会で、日本経済団体連合会の中西宏明会長が「Society(ソサエティー)5・0―ともに創造する未来―」と題して講演。ソサエティー5・0で新たな未来創造社会が開かれる、と位置付けた上で、そのベースとなるデジタル革新の波は、社会のいろいろな課題を解決し、価値を創造する力があると強調。経団連は第一の重点項目として取り組むとの考えを示した。以下は講演の抄録。(編集部)

 

 今年は忙しい年になるだろう。20カ国・地域(G20)首脳会合が日本で開かれ、選挙が立て続けにある。皇位継承があるし、消費税率引き上げもやってくれるだろう。海外では、米中関係にはハラハラさせられるし、英国のEU(欧州連合)離脱問題など時計のねじを逆に回すような動きが顕著だ。

 変化のときは、クライシス(危機)であると同時に、オポチュニティー(好機)という見方もできる。本日のテーマのソサエティー5・0という提言をしたい。デジタル技術の活用が、社会のさまざまな分野の可能性を広げるほか、個人の生き方そのものが良くなることにつながるということを中心にまとめた。

 狩猟社会、農耕社会、工業社会、そして情報社会を超える新しい未来創造社会を開く、新たな社会のコンセプトがソサエティー5・0で、その基本はデジタル革新の波だ。何でもデジタルに変換でき、ストックして、見えるようにできる。機械そのものがインターネットに通じて会話できるようになった。モノとつながるインターネット(IoT)だ。

 このインパクトは大変強く、いろいろなところにデータが集まる。そうすると人間の観察では分からなかったことまで見えてくる。これをベースにして次に何をするべきか、明快にできるAI(人工知能)的ニーズだ。

 それをうまく使うと、ロボットが知能ロボットになる。そうするとブロックチェーンという新しいデータの作り方、伝送の仕方、監視の下でデータが動き、しかも改ざんできない。これはすごいツールになるというので、こういうことをベースに社会の基盤を作っていくというインパクトのある動きになる。

 

持続可能性

 

 その結果として何を狙うのか。価値を生み出す社会だ。デジタルの力を使ったデジタル・トランスフォーメーション(デジタル変革)とか、第4次産業革命とか言っていること自体が、いろいろな制約から人の生活、人類を解き放す動きにできるのではないか。

 2015年に国連が定めた30年までに取り組むべき17の「持続可能な開発目標」(SDGs)。貧困から脱出しよう、食料は誰でも食べられるようにしようという、地球そのものをサスティナブル(持続可能)にしていこうというコンセプトだ。デジタルの力を使った活動は、このSDGsを実現する方向と同じだ。経済界の活動も結び付けていこうということで、今回の提言では9分野を例示している。

 例えばエネルギー。クリーンで二酸化炭素の極小化を図るようなエネルギーを使っていくことが、デジタルの力を使うとできる。だが、福島第1原発の事故以降、火力発電への依存度が80%を超えた。原子力発電は再稼働が全然進んでいない。再生エネルギーは構造的にもう増えない。これを政策的にどうするか検証が始まっている。それこそビッグデータの活用が期待できる。

 ヘルスケアも大きな課題だ。日本には世界に誇る皆保険がある。一方で医療費が膨らみ大変な負担だ。高齢化社会では病気にならないためのケアという社会システムを作っていくことが重要だ。若い時からのデータがあると予防は相当できる。ビッグデータの典型例だ。健康に老後を過ごすクオリティー・オブ・ライフそのものになってくる。

 次に農業・食品。日本の農業は非常に危機的な状況にある。付加価値が高い農業にし、若い人が参入できる仕組みはデジタル化だけでできるわけではないが、土地の制約などは相当乗り越えられる。

 金融とITを融合したフィンテックで、金融サービスも変わるだろう。米国ではアマゾンがリテール産業の構造を変えているし、中国のアリババは生活のベースとなる基盤をアリペイで作ってくるので、金融業との境目はほとんどなくなる。これを経済的な自立とか、所得格差の解消へ、どううまく使うかどうかが課題になる。

 

「出島」をつくる

 

 いい話ばかりしたが、実際に展開していくには、日本にはやらなくてはいけないアクションが相当ある。

 まず、変えていかなくてはならないのは少子化・高齢化、地方衰退、財政悪化、エネルギー問題だ。こういう問題に真正面から取り組んでいくことが日本の役割だ。

 そして、実際のアクションとして一番変わらなくてはならないのは企業だろう。企業アクティビティーを社会価値の増大に結び付けていくことが必要だ。そうすると産業の新陳代謝は免れない。それがイノベーションだ。日本は大企業に人材が集中、一生会社にいるという構造が多々見受けられる。

 江戸時代の「出島」みたいなものをつくって、大企業のルールではないところで、新しい事業にトライアルしていくべきではないか。

 ソサエティー5・0は夢のある世界でスタート、それをどう展開していくか。逆に言えば、いろんな課題を突き付けられている。このコンセプトを学びたいというのが世界の指導者たちの声なので、経団連としては活動の第一の重点項目として推進していきたい。

 

(KyodoWeekly2月18日号から転載)

 


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