経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

増税時の景気対策は不要―国民への説得回避する政府

 約2年前の本コラムで「税務データを用いた分配側GDPの試算」という日本銀行金融研究所が公表したレポートを紹介した。それは、2014年の消費税率引き上げが、経済成長にマイナスだったという〝通説〟に疑問を呈するものであった。

 つまり、消費増税によって、短期的には消費者らによる買いだめ、買い控えが起きて、小さなアップダウンが記録されたとしても、両者は相殺し合って中期的には成長率に影響がなかったということだ。

 こうした分析結果が示されているにもかかわらず、政府は今秋予定されている消費増税実施を控え、景気後退を懸念して数々の対策を立案している。ポイントの還元とか、国土強靱(きょうじん)化のための公共事業投資とか、財政支出の拡大を不可避とする対策である。そんなことでは、財政再建という消費増税の本来の目的を見失わせることになる。

 成長戦略の追求からみて、これらの政策は、ほとんど意味はない。対策なしに増税しても経済成長には影響を与えないからだ。だから、一連の対策は、経済政策ではなく選挙対策でしかない。そのような目くらましは、将来世代に残る負担をかさ上げするだけになる。

 海外では政策の科学的な検証を証拠に基づいて行う「エビデンス・ベースド」という接近法に基づく政策評価が導入されつつある。この潮流は、日本でも政策立案者の関心を引きつけ、研究も始められている。

 日銀レポートは、明快に実証的な検証結果を示している。これに学ぶとすれば、消費増税に関連する景気対策は不要だと判断すべきである。効果がない、無用で無駄な支出をすべきではない。

 それにもかかわらず、政府与党は選挙対策に狂奔している。なぜ、財務省は前回増税の経験やそれに対する明快な政策評価に依拠して、無駄なばらまきに反対しないのか。なぜ、国会では目先の対策ではなく、財政再建に向けた真剣な論戦に踏み込まないのか。

 昨今の統計に関わる不祥事の多発は実証的検証の基盤を揺るがしている。だからといって、どんな検証結果も信頼できないとはいえない。曖昧な統計数字を並べて成長戦略の成果を誇ってきた安倍晋三首相にとって必要なのは都合のよい数字であり、正確な統計調査ではないのだろう。統計調査の軽視は、そうした政権の体質に由来する。

 客観的根拠があるかのように提示される増税対策は、根拠が薄弱であり、選挙に負けることへの恐怖感から推進されているにすぎない。なすべきことは、増税の必要を正面から論じ国民を説得することである。それを回避する政府の態度は、あめをしゃぶらせれば泣きやむ赤ん坊並みに、国民を見下しているからではないか。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly2月11日号から転載) 


PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ