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「丸投げ」の危うさ―民主政治再建元年に

 外国人労働者の受け入れ問題が政府与党の強引な議会運営による法改正の実現により、今春から新制度に移行する。しかし、具体的な制度設計のほとんどは政令などに委ねられる異例の改正法となった。立法府で議論を尽くして新しい制度を創意工夫すべき時に、法案通過を優先した議員たちの態度は、責任放棄という以外にはない。

 行政府に「丸投げした」委任立法の危うさは、約80年前の国家総動員法を思い起こさせる。

 1938年に第1次近衛文麿内閣によって制定された国家総動員法は、日本が総力戦体制に突き進む上で決定的な役割を果たし、広い範囲で経済統制が実施される根拠となった。

 ナチスドイツの「全権委任法(授権法)」を参照したともいわれる総動員法は、行政府に強大な権限を付与した。そのため統制に必要な措置はすべて「勅令」(天皇の命令の形式)に基づいて実施された。

 衆議院では「裏からでも表からでもよろしいが、どうぞ十分にラジオを通じ、新聞を通じ、速記録を通じて国民に分からせてもらいたい」との統制内容のていねいな説明が求められたが、政府はこれに答えることはなかった。

 委任立法は、三権分立という民主主義の原則から見ると、著しい逸脱である。総動員法ほど広範囲でなくとも、改正入管難民法は、行政判断によってどのようにでも制度を改変できる。法の趣旨も曖昧なままで、法解釈の任意性も高いからだ。

 アメリカのように司法権の独立性がそれなりに機能していれば、行政府の逸脱をチェックすることも期待できる。しかし、日本の司法は、地方自治の原則を犯す、埋め立て工事の強行に対しても、及び腰で本来の機能を果たさない。行政手続きは政府の都合のよいように解釈され、運用に対する国民の異議申し立ては取り上げられない。

 国家総動員法を審議した本会議で、政府原案賛成の社会大衆党の西尾末広氏は「ムッソリーニのごとく、ヒトラーのごとく、あるいはスターリンのごとく大胆に進むべき」と近衛首相を激励した。総動員法は、こうした独裁者たちと同等の権限を首相に与えると考えられていた。

 安倍晋三首相がこれらの独裁者たちの姿を追いかけているとは思わないが、憲法改正に「ナチスの手法をまねたら」と失言した麻生太郎財務相を盟友とする内閣だけに、危うさはこの上ない。

 議会制民主主義を守るため奮闘していた斎藤隆夫議員は、太平洋戦争開戦前夜の既成政党に対して「政府に対する態度は極めて軟弱」「政府案をうのみにする」「幹部は政府に迎合し、党員は幹部に盲従する」と批判していた。現在の空洞化した議会と責任を果たさない議員諸氏にこの批判がそのまま当てはまる。

 新元号となる今年こそ、民主政治再建元年としたい。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly1月14日号から転載)


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