経済
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“ルール”を変えるために世論・政策にどうアプローチをすべきか(下)

 新興国の台頭や米国企業を筆頭とする技術革新により、グローバル競争の激しさが増している。そうした中、日本の企業が生き残るためには、既存のルール内でいかにビジネスを拡大するかだけではなく、ルール自体を企業や業界として提案し、競争の優位性を確保していくことが求められている。今回は、そのアプローチ方法について深めていきたい。(「上」は11月19日号に掲載)

 

 今注目を集めているのが、企業・組織がより良い経営環境を作り出すために、世論や政策関係者にアプローチを行う“パブリックアフェアーズ(以下、PA)”だ。

 PAでは、生活者への“情報発信を通じた世論喚起”とともに、ルールメーカーである“政策関係者との対話活動”が重要な要素となると(上)で述べた。

 そこで本稿では、より良い対話活動の実現に向けて、政策関係者の求める情報について東京大学、ホットリンク(東京)と企業広報戦略研究所が共同で実施した、政策関係者である国会議員を対象とした調査、研究結果を紹介させていただきたい。

国会議員にとっての情報の信頼度と利用度の関係

 

イノベーション政策調査

 

 今秋の研究では解決することで、社会・経済・生活が大きく変化し、より良くなる課題を「社会イノベーション課題」と定義した上で、そうした課題に関する政策を「社会イノベーション政策」として捉えた。

 そこで、立案をとりまく実態について国会議員全員(衆参両院・約700人)へ調査票を送付し、うち回答いただけた64人の意見・回答について分析を行った。

 まず、国会議員がイノベーション政策を考える際に必要な情報と情報源については、約8割が「政策立案においてデータなどの“客観的なエビデンス(証拠)”を求める」との回答だった。

 一方、そうした情報が不足しているとした議員も8割を超えるという事実が明らかとなった。さらに、政策立案における課題について改めて尋ねると「政策を立てるためのエビデンスが足りない」という声が6割を超えた。

 これらの結果から、国会議員が求めているのは「基礎情報・データ・統計」「科学的な分析・解説」「経済効果などの試算結果」などの“客観的なエビデンス”であると分かる。言い換えれば、ルールメーカーである国会議員に対して企業が働きかけをする際には、このようなエビデンスを準備した上でのアプローチが重要なポイントになりえるのだ。

 また、国会議員が信頼する情報源の上位三つは「国会図書館」「勉強会・研究会」「有識者やその論文」であった。一方で、新聞・テレビといったマス報道の信頼度は47・2%と上記に比べて低く、「ネットニュース」や「SNS・ブログ・動画共有サイトなど」にいたっては20%以下と極端に低い結果となった。

 つまり、国会議員は限られた情報源に比較的高い信頼を寄せている一方で、マス・ソーシャルメディアに対する信頼は低いという実態がうかがえる。

 とはいえ、生活者は常に社会課題の兆しをソーシャルメディアで発信している。そこで、詳細は割愛するが、今回の調査では、ソーシャルメディア(ツイッター)のビッグデータと独自開発した人工知能(AI)を用いて課題の抽出を図り、ソーシャルメディア上でどのようなコミュニティーを形成している人々が、どのような社会課題に関心があるのかを明らかにする研究も行っている。

 

公共性を意識した対話

 

 調査で回答いただいた国会議員からは「“生活者の具体的な声”と“規模感(人数)”が客観的に伝わるエビデンスがあれば、社会課題に関する生活者の声に関して議員も耳を傾けやすい」という意見もあった。

 企業・組織が“ルール”を変えるために、世論・政策にどうアプローチをすべきか。

 その答えは、前回の(上)でも説明したように、まず提言する政策の内容が自社の利益だけでなく社会課題を解決するような“公共性のあるストーリーを伴っていること”だ。

 そして、今回ご紹介したように、ストーリーの証左となる“客観的なエビデンス”の準備が挙げられる。

 その上で、“政策関係者への直接的な対話活動”が重要なのだ。自社の利益だけを追求する企業姿勢は、人々に魅力的に映りにくい。あくまで提言の内容については公益性を意識したものでなければ、人々も、政策関係者も、動いてくれないのだ。

 だからこそ、客観的なエビデンスに基づく社会的な対話活動が必要となる。すなわち企業・組織がより良い経営環境を目指して行うPAは、世の中に新しい価値を創出する企業活動を超えた“社会活動”とも呼べるかもしれない。

 

 ※   ※   ※  

 本稿(上・下)を通じて、日本企業におけるPA推進の参考の一助となれば、幸いである。

 

[筆者略歴]

電通パブリックリレーションズ 

関口 響(せきぐち ひびき)

コーポレートコミュニケーション戦略局、パブリックアフェアーズ戦略部、企業広報戦略研究所主任研究員

 

(KyodoWeekly12月10日号より転載)


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