経済
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“ルール”を変えるために世論・政策にどうアプローチをすべきか(上)

 新興国の台頭や米国企業を筆頭とする技術革新により、グローバル競争の激しさが増している。そんな中、日本の企業が繁栄しながら生き残るためには、自社に有利な経営環境を作り出すことが求められる。そのためには、ビジネス上の既存ルールを変更できるよう、企業・業界が積極的に政策提言をすることが重要な時代に入った。

 

 

 質の高い技術力とサービスにより競争を勝ち抜いてきた日本企業の経営者は、グローバルで戦うに当たり外国企業のスタンダードに合わせた経営戦略を求められ、苦労している声が多く聞かれる。

 競争相手となる外国企業には、既存のルールの中でいかにビジネスを拡大するかだけではなく、ルール自体を企業自らや業界として提案し、競争の優位性を確保していく考え、いわゆる“ルールメーキング思考”が根付いている。

 こうした思考を持ち合わせている外国企業との競争において日本企業が勝利するには、彼らのルールメーキング思考を理解・実践し、自社にとって良い経営環境に近づくよう、積極的に政策を提言していく必要があるだろう。

 ルールメーキング思考に基づき、企業や組織が、より良い経営環境にするために、世論や政策関係者に働きかけていく“パブリックアフェアーズ(PA)”が日本でも注目されつつある。そうした活動が企業に求められるケースは大きく二つに分類される。

 

“攻め”と“守り”

 

 一つ目は「守りのケース」。自社のビジネスにとって損失を与えかねない新しいルールが検討された際に、自社のビジネス環境を守り、消費者への良質なサービスを維持することを目的に、政策関係者および世論に働きかけていくケースである。

 例えば、税率変更や年齢制限などによって市場が縮小する恐れが生じた際、生活者が被るデメリット・公益性の低さを、世論と政府関係者に訴えていくようなケースが挙げられる。

 二つ目は「攻めのケース」。今までになかった革新的な技術を普及させたい場合や、新規の事業を始める際に、既存のルールや岩盤規制を新しいビジネスに沿うようなルールへと変えるべく、世論と政策関係者に求めていく場合だ。

 このケースでいえば、自動運転やドローンなどの新技術に対して、規制緩和などを目的に政策関係者に働きかけていくような事例が該当する。

 上記のようなパブリックアフェアーズは、欧米で活発に行われているロビイング(ロビー活動)が真っ先に頭に浮かぶ方も多いだろう。

 ロビイングは情報収集や政策提言などを通じて積極的に業界団体や企業が行政に働きかけていく活動であるが、パブリックアフェアーズは、政策関係者への働きかけだけではなく、提言する政策の必要性を世論に訴えて賛同を得ることも含んでいる。

 米国ではロビイストは登録制となっているが、ロビイングの法制度が存在しない日本では、政策関係者への働きかけだけではなく世論の働きかけも併せて行うパブリックアフェアーズがルールメーキングをするうえで重要となっている。

 例えば、2014年に医療系サービス会社が自己採血による簡易検査の合法化に向けたパブリックアフェアーズを成功させている。

 まず、この会社は2008年ごろより規制当局に自己採血検査が違法かどうかの確認の働きかけを重ね、容認を引き出したた上で、政府発表のデータや独自調査の結果を積極的に外部へ発信することで、他企業・自治体からの支援連携や世論からの賛同を獲得した。

 産業競争力強化を推進する政府の規制緩和の流れも後押しとなり、2014年に「自己採血による簡易検査」は合法化された。

 政府への働きかけだけではなく、世論からの賛同も得る動きを行ったことで、合法化された典型的なパブリックアフェアーズの成功例といえる。

 

イノベーションPAモデル

 

 さらに、過去に規制改革を果たした複数の成功事例を研究し、当事者らにヒアリングを行ったところ、日本で世論と政策に働きかけていくパブリックアフェアーズの際に必要な成功要因は、ソーシャルバリュー(社会価値)、エビデンス(証拠・証左)、エンゲージメント(関係構築)の三つであることが、弊社の企業広報戦略研究所の研究から明らかになっている。(図参照)

 パブリックアフェアーズを成功させるためには、企業は世の中の人々がどういった社会課題に興味を持ち、国会議員らを筆頭とするルールメーカー(政策関係者)が何を欲しているのかについて把握しておく必要がある。

   ※    ※ 

 次回(下)は、東京大学と企業広報戦略研究所が共同で実施した「イノベーション政策調査」から明らかとなった生活者が関心を寄せる社会課題、および国会議員が求める情報・情報源についての研究結果をご紹介したい。

 

[筆者略歴]

電通パブリックリレーションズ

関口 響(せきぐち ひびき)

コーポレートコミュニケーション戦略局、パブリックアフェアーズ戦略部、企業広報戦略研究所主任研究員

 

(KyodoWeekly11月19日号より転載)


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