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意外と知らない「ふるさと納税」 人生100年時代のマネー設計①

 人生100年時代と言われるようになり、今まで以上に、お金の問題を真剣に考えなければならなくなってきた。貯蓄や節約だけではなく、投資や税金の知識をしっかり学び、生活に取り入れていくことが不可欠だ。今回は、過度な返礼品が話題となり、総務省が法規制も検討している、「ふるさと納税」をテーマとし、その仕組みと課題について、金融問題の専門家にやさしく解説してもらった。(編集部)

 

 「納税」という言葉が使われているので難しいイメージを受けますが、「ふるさと納税」は都道府県や市区町村への「寄付」を行うための制度です。寄付の対象は故郷の自治体である必要はありません。

 具体的には、自分が選んだ自治体に寄付を行った場合、控除上限額までは、原則として「自己負担額(1月から12月までに行った寄付の総額)から2千円を除いた額」が控除の対象となります。控除上限額は収入や家族構成などで若干の違いがありますが、「ふるさと納税」関連のインターネットサイト(総務省のふるさと納税のポータルサイトや、さとふる、ふるさとチョイスなど)で概算金額を調べることができます。

 例えば、年収500万円の独身者(あるいは共働き)の場合、約6万1千円(概算)が控除上限額となり、ここから2千円を引いた金額が、所得税と住民税から控除されます。実際は、翌年度に払うべき税金を前払いしているイメージです。サラリーマンの場合、「ふるさと納税」を行った翌年の6月に届く「住民税決定通知書」の中で控除を確認できます。

 

家計の足しに?

 

 「ふるさと納税」を行う人が増えている理由は、各自治体が寄付金額に対して返礼品を送るからです。返礼品は地域特産の果物、野菜、米、魚介類、あるいは地元で作られた工業製品など多種多様です。「ふるさと納税」によって税金が控除される上、返礼品を受け取ることができるので、寄付する人にとって魅力的な制度となっています。また、お米を返礼品にしている自治体の人気が高いことから、「ふるさと納税」を家計の足しにしている人が少なくないことがうかがえます。

 制度を利用する人が急速に増えたもう一つのきっかけは、「ふるさと納税」の税制改正とワンストップ制度の創設です。「ふるさと納税」の税制改正では、2016年度以降の個人住民税において特例控除額が10%から20%に引き上げられました。また、ワンストップ制度の創設により、確定申告の不要な給与所得者などが「ふるさと納税」を行う場合、1年間の寄付先が5自治体までは確定申告を行わなくもいいことになりました。自治体のホームページや「ふるさと納税」関連のインターネットサイトを通じて「ふるさと納税」を行う時にワンストップ制度を申請し、送られてくる申請書を提出すれば確定申告が不要になります。この制度は、確定申告の手続きがよく分からない、あるいは面倒と感じる人の心理的なハードルを下げたと考えられます。

 「ふるさと納税」を行った人は15年度に43万6千人でしたが、ワンストップ制度導入後の16年度は129万9千人(うち、ワンストップ制度利用者41万9100人)、18年度には295万9千人(うち、ワンストップ制度利用者110万2千人)まで増えています(図表参照)。

 この他にも、クレジットカード決済の導入やお礼の品の配送日指定、送り先(寄付者以外の宛先も可能)指定など、「ふるさと納税」を行いやすい工夫がなされています。

 総務省では、「ふるさと納税」の使い道や成果を知ってもらうための取り組みなどの一つとして、ホームページで各地の好事例を紹介しています。これらを見ると、「ふるさと納税」による税収が、子育て支援、伝統芸能の振興など、地域が抱える課題を解決するために使われている例が多いことが分かります。

 また、「ふるさと納税」関連のインターネットサイトである「ふるさとチョイス」を利用して、豪雨などにより被災した地域への納税額が約45億円(筆者調査時点)に上っており、困っている地域への支援の役目を果たしていることも見て取れます。

 

税収減の自治体も

 

 一部の自治体では税収減の影響が問題視されています。総務省によれば、市区町村別で控除額(市区町村民税)が最も多いのは横浜市(約103億円)で、名古屋市(約60億円)、大阪市(約55億円)、川崎市(約42億円)、世田谷区(約40億円)と続きます。税収が減る自治体では行政サービスへ回せる資金が減ってしまう可能性もあります。

 高額所得者をはじめとし、控除上限額の在り方については、検討をする必要は出てくると考えます。加えて、現状のままでは、地域の特性から、魅力的な返礼品をそろえられる自治体に寄付が偏る傾向は否定できません。ワンストップ制度の寄付先の数を引き上げるなど、幅広く寄付が行き渡る工夫も必要ではないでしょうか。

 一方、今年9月には、野田聖子総務相(当時)が高額返礼品の規制へ法改正する方針を表明しました。賛否論が起きている「ふるさと納税」ですが、納税する側としては、返礼品を期待するだけではなく、税金のことを学ぶためのよい機会になるという捉え方も大切だと考えます。

 

[筆者]

日本総合研究所 創発戦略センター ESGリサーチセンター

小島 明子(こじま あきこ)

 

(KyodoWeekly11月12日号より転載)


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