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〝仮想発電所〟を知っていますか 地域の価値創出に期待感

 東日本大震災以降、注目されている仮想発電所(バーチャルパワープラント=Virtual Power Plant=以下VPP)の仕組みを活用した地域エネルギーサービスの創出に向けて、複数の企業や自治体などとともに取り組んでいる「ローカルVPPイニシアティブ活動」について紹介する。

 

 エネルギー供給システムは従来の大規模かつ集中型のエネルギー供給から分散型のエネルギー供給へと変化している。昨今では「脱炭素社会」の潮流もある中、再生可能エネルギーが急速に普及し、安定かつ有効な活用へと変化している。

 この分散型エネルギー(蓄電池や発電設備などの分散型エネルギーリソースやデマンドレスポンスなど)、つまり天候などによって出力が変動する再生可能エネルギーを高度なエネルギーマネジメント技術により遠隔・統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させる仕組みがVPPである。

 VPPの構築は、エネルギー供給システムを変えていく。それだけではなく、分散型エネルギーリソースを活用することで、効率的なエネルギー利用による温室効果ガス排出量の削減、家庭などでのエネルギーコスト削減や災害時の自立電源の確保、地域の民間事業者が新たなエネルギーサービスとして関与することによる産業・雇用の創出など、多様な地域価値の創出も期待される。

 

最適な規模

 

 今後、VPPの構築を普及させていくためには、持続可能なエコシステムとして地域へ定着させ、市場を広げる必要がある。 このためには、2020年に50メガワット(MW)のVPP構築を目指した大規模な実証とともに、現時点から小規模でも、最適な規模を想定したVPPを構築し、いち早くその価値を、地域社会に実感してもらうことが重要である。

 富士通総研では、民間事業者・団体と連携し、まずは地域価値の視点に立ち、住宅団地や集合住宅など、特定されたエリアや集合体を対象とした再生可能エネルギー(太陽電池など)や小型蓄電池、IoT(モノのインターネット)やブロックチェーンなどの新たな技術を活用した自律分散型エネルギーサービス(ローカルVPP)の開発に取り組んでいる。

 現在、この取り組みは、ローカルVPPイニシアティブ活動として進め、これを提唱している、芝浦工業大非常勤講師中村良道氏の協力の下、複数の企業や自治体などとともに検討している。

【図】ローカルVPPイニシアティブ活動イメージ

 ローカルVPPイニシアティブ活動は【図】に示すとおり、大きく「協調」(マーケット・インキュベーション)と「競争」(ビジネス・インキュベーション)の観点から進めている。

 国が進めるVPPの構築は20年を目途としており、現時点では、市場創出の段階といえる。

 前者の観点は、まず市場の創出を見据えながら、今、実現できる最適な規模のローカルVPPサービスを、関連する企業・団体とともに考え、普及させることによって、その価値を地域に認知・実感してもらうための「協調」活動となる。

 後者は、このような新しいエネルギーサービスを導入することによって、地域や資産価値を高めたいと考える自治体やデベロッパーなどとのマッチングによって、ローカルVPPサービスを実装・展開していく。まさに事業化の取り組みであり、この段階では民間の知見・ノウハウを生かした「競争」活動となる。

 

地元企業と連携

 

 具体的なフィールドの一つとしては、横浜市住宅供給公社の「暮らし再生プロジェクト」のコンセプトに基づき、老朽化した団地やマンションの再生に向けた取り組みとしてローカルVPPサービスを検討している。

 これは、団地・集合住宅の高圧一括受電内をマイクログリッド(電力網)と見立てて、太陽電池や大量の小型蓄電池などの分散型エネルギーリソースを配置・統合化することで、電力融通を実現し、将来的に構築されるVPPへの接続も視野に入れる。

 一方、「自社だけではサービスが考えられない」といった声や、自治体からも、「資金が確保できない」「事業の採算性の判断が難しい」などの声も多い。VPPがまだ認知されていない中で、市場をどのようにつくっていくのかが重要と考える。

 今後、例えば、庁舎などの公共施設群や小・中学校群などといった施設、設置される蓄電池などを分散型エネルギーリソースとして束ねる。その上で、施設の利用特性に応じたローカルVPPサービスを、地元企業とも連携しながら提供するなど、広がりをもったコミュニティーエリアでの取り組みも想定している。

 開始したばかりの活動ではあるが、2020年も目前であり、市場創出の活動を加速させたい。

 

[略歴]

富士通総研コンサルティング本部行政経営グループプリンシパル

コンサルタント

上保 裕典(うわぼ ゆうすけ)

2006年富士通総研入社。官公庁に対する地域・産業振興に関する計画策定のコンサルティングに従事。近年、地域の成長戦略、新ビジネスの立ち上げも手掛ける

 

(KyodoWeekly10月15日号より転載)


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