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【コラム】幸せな親子を作る3つのヒント 元校長が「ひとり親家庭の子育て」から考えたこと

普通サイズは1.5キログラム、わが家のカボチャは3.4キログラム。育てたのか、育ったのか
普通サイズは1.5キログラム、わが家のカボチャは3.4キログラム。育てたのか、育ったのか

 弁当作りを通じて子どもたちを育てる取り組み「子どもが作る弁当の日」にかかわる大人たちが、自炊や子育てを取り巻く状況を見つめる連載コラム。「弁当の日」提唱者である弁当先生(竹下和男)が、教員生活の中で知り合った、ある「ひとり親家庭」の話から———。

「頑張って子育てしてきたおかげで、“父の日”も“母の日”も祝ってもらえるようになりました」

 コロナ禍で、ひとり親家庭の経済的困窮ぶりが多く報道されています。そんな報道に、私がいくら心を痛めても、当事者には何の役にも立たないと思いますが、私の話で少しは元気が出るかもしれません。

 父子家庭のお子さんが大学生になった年の「母の日」。父親が帰宅すると、子どもが手料理を作って、待っていてくれたそうです。父親が「今日は“母の日”だろう?」と首をかしげると、その子はこう答えたそうです。

「お父さんがしてくれた、お母さん役に感謝しているから」。

 そうです。「お母さん役」をしたのは父親ですから、その子は父親に感謝したのです。
 この父親は「父の日」に、その子が初めてもらったアルバイト料で、夕食をごちそうになりました。父親は帰り道、私に電話をかけてきたのです。

「頑張って子育てをしてきたおかげで、私は娘から“父の日”も“母の日”も祝ってもらえるようになりました。もう少ししたら、“敬老の日”も祝ってもらえそうです」。

 その父親は、もう還暦が近かったのです。「妻がいなくなっても子育てを頑張ってきて良かった」と喜んでいました。

 この父親が感じた幸福感を、できるだけたくさんの人に感じてほしいと思って、私はこの話を児童、生徒たちに紹介してから、こう言っています。

「あなたたちの中に、ひとり親家庭の子がいるかもしれません。母子家庭のお母さんは、父親役もしています。父子家庭のお父さんは、母親役もしているのです。“父の日”にお父さんがいないと嘆かなくていい。“母の日”にお母さんがいないと悲しまなくていいのです」

「親に感謝の気持ちを伝えるために、卵焼きを作る。それなら、自分にもできそうでしょう? もちろん、両親がそろっていてもできることです。たとえば“母の日”に、お母さんに卵焼きを作ってあげれば、それを喜んでいるお母さんを見て、お父さんが“父の日”はハムエッグがいいな、と言うかもしれません。そんな家族の会話、素敵だと思いませんか」

「家族の絆を深めるために、あなたたちにできることは意外と簡単です。親だって、子どもがうれしいことをしてくれると、疲れも取れるし、元気も出るのです。今日、自宅に帰ったら、実際に何かをする子がこの中にいると思います。より良い人生を送ることは難しいことではありません。小さくても、いいと思ったことを、実際にやってみることです。良かったら繰り返すこと。そうすれば、次にできそうなことが見えてくるのです」

 この話を児童、生徒が目を輝かせて聞いているとき、私までが幸せな気分になっています。

 子どもが健やかに育つには、次の3つが大切だと考えています。

「夫婦仲が良いこと」「大人が子育てを楽しむこと」「大人が成長し続けること」。

 ひとり親家庭は、夫婦仲が良いところを子どもに見せられません。でも、ひとり親になった原因が「離婚」なら、子どもに「夫婦ゲンカ」を見せなくてすみます。ものは考えようでしょう。

 「夫婦ゲンカ」は、子どもを精神的に強く苦しめます。父母間の暴力や悪口雑言は、子どもにとっては消え入りたいほどの地獄です。自分の存在そのものを「悪」と感じてしまうのです。離婚によってその地獄がなくなり精神的な安らぎを得られるなら、子どもにとってプラスです。

 ただし、「親の離婚を止めることができなかった存在価値のない自分」と考えて、子どもが落ち込むことがあるので、常に気配りをしてください。子どもの親の悪口も控えてください。子どもは、人を憎んでいる親を見るのは辛いのです。ましてや憎しみの対象が実の親なら、なおさらです。

 ひとり親の原因が「死別」なら、亡き夫や妻を褒める言葉を、子どもに聞かせればいいのです。自分の父親や母親を褒める話は、子どもにはうれしいのです。何回聞いてもです。亡き父や母を偲ぶ親の姿によって、子どもは少しずつ落ち着きを取り戻し、強くなっていきます。

「大人が子育てを楽しむ」というのは、子育てを嫌がったり、面倒がったりする場面を作らないことです。

 経済的に苦しかったり、肉体的に疲労がたまっていたり、時間的に余裕がなかったりすると、衝動的で攻撃的な言動をしてしまいます。それは、子どもの存在そのものを否定する環境を生み出します。「うるさい」「バカ」「来るな」「殴るぞ」はもちろん、「死ね」「産むんじゃなかった」は最悪です。

 子どもは普段から、親に喜んでもらおうとしています。でも、その行動が、親にとって迷惑にしかならなかったという経験をしがちです。なので、まずは褒めてやることです。

「助かった」「ありがとう」「また期待していい?」なんて言われると、子どもは簡単に「うん」と言います。そうすると、ホントに役に立つことが増えていくのです。ものは考えようです。

 子どもには失敗する権利があります。大人だって失敗します。子どもの失敗が少なくなれば親はうれしいし、うれしそうな親を見て、子どもは「もっと上手くなりたい」と願います。自分の成長が親の喜びにつながると知り、子どもはさらに努力して向上していくのです。

「大人が成長し続けること」が大切なのは、子どもの成長のメカニズムに理由があります。

 「まねる→まねぶ→まなぶ」と言葉が変化してきたといわれるように、「学ぶこと」はもともと「まね(模倣)」から始まります。幼児は、五感のすべてを駆使して現実の世界をまねようとします。「ミラーニューロン(Mirror neuron)」という脳神経が増える時期です。「ミラー」は「鏡」ですから、「写し取るようにまねること」が、「学ぶこと」の始まりということです。

 子どもの健やかな成長を願うなら、子どもが目にする大人たちが、自身も成長している背中(生き方)を子どもに見せることです。まずは、幼い子どもにとって身近な親から。そして家族や地域の大人たち、世界の大人たちもです。

 38年間の教員時代、たくさんの教員と仕事をしてきました。いくら怒鳴りつけても静かにしなかった生徒たちが、別の教員の決して大きくない声の「静かにしなさい」に反応する場面を何度も見てきました。

 生徒は「言葉」に反応しているのではなく、「言葉を発している人」に反応しているのです。生徒たちの、教員に対する鋭い洞察力には脱帽します。それは、親子にもいえることです。

 自分にできるステキな生き方を追求している親の姿こそが、子どもを健やかに育てます。私が「育てる」のではなく、私を見て「育つ」と考えればいいのです。あなたが強く生きること、明るく楽しく暮らすこと、それが一番いい子育てなのです。

竹下和男
 1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。

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