生活情報のコラム

【スピリチュアル・ビートルズ】環境、動物の権利擁護に取り組み続けるポール ジョージも「大量生産・大量消費」に批判的

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 2021年1月、米国ではドナルド・トランプが表舞台から退き、ジョー・バイデンが第46代大統領となった。バイデン大統領は前任者の政策を次々に覆している。そのうちの一つが、地球温暖化といった気候変動を食い止めるためのパリ協定への復帰である。

 ポール・マッカートニーはこの問題をめぐり、トランプを激しく批判していた。2018年のアルバム『エジプト・ステーション』に収録されている「ディスパイト・リピーティッド・ウォーニングス」という作品だ。ポールは英BBCラジオ1に対して「気候変動を否定する人々は、ぼくが思うには、最もばかげている(者たちだ)」と語った。

『エジプト・ステーション/ポール・マッカートニー』 (ユニバーサルミュージック)
『エジプト・ステーション/ポール・マッカートニー』
(ユニバーサルミュージック)

 トランプを名指しすることを避けながらも、ポールは続けた「滅多にないことかもしれないけれど、我々みんなが乗っているボートには気がふれたキャプテンがいる。彼は私たちを氷山へと連れて行こうとしている。それはクールでないと警告されているにも関わらず」。

 そしてポールは、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのような若者を念頭に置いてか、「若い世代が取り組みを始めていることは本当に新鮮だ。大都市は以前より危険な状況にある。以前より多くの悲劇が報告されているが、ぼくが知っている若者たちはその問題に取り組んでいくような者たちだ」と述べた。

 だがポールは決して楽観視しているわけではない。かつて彼は、地球温暖化を否定する者たちは独ナチスによるユダヤ人大虐殺「ホロコースト」を否定するようなものだと警告していたくらいだ(2010年6月29日付イスラエル紙「ハアレツ」)。

 ポールの気候変動問題への取り組みは数十年に亘る。例えば、1989年から90年にかけてのワールド・ツアーでは国際NGO「地球の友」(Friends of the Earth)と連携した。コンサート・パンフレットの冒頭には、オゾン層に穴が空いてしまったことで酸性雨が降り、農薬として使われる怪しげな化学製品のために、土がダメになって一握りの植物しか育たなくなったが、従来の人々の生活を改めることによって問題を解決しようとする子供の力で大地が蘇っていく、というポールのメッセージが記されている。

 ポールが、環境問題とも切り離せない問題としての肉食を避け、菜食中心の生活に人々がなるべきだと主張していることは有名だ。妻リンダとともに本格的に菜食主義者(ベジタリアン)になったのは70年代前半のことだ。それはただ単に動物がかわいそうだからということではなく、肉食は地球環境にも負荷を与えているからだ、と彼らは言った。

 例として挙げたのは、家畜の飼育を増やすことが広大な熱帯雨林を切り開くことにつながっていること。「熱帯雨林1ヘクタールは、約80万キログラムの動植物を維持している。同じだけの土地が家畜の飼育のために切り開かれると、年に最高200キログラムの肉を生産出来る。しかし、その肉からは約1,600個のハンバーガーしか出来ない」(「リンダ・マッカートニーの地球と私のベジタリアン料理」文化出版局)。

 ジョージ・ハリスンも「コッカマミー・ビジネス」という89年の作品で次のように歌っていた「今やぼくらは空調にすがって生きている/オゾン層がなかったらしんどいものだ/今でも彼らは森林を切り倒している/マクドナルドやバーガーキングのために/あくまでも牛を食べるということに/反論はあまりないようだ/この怪しげなインチキ稼業では」。

 2015年には、ポールは、ジョン・ボン・ジョヴィら他の15人のアーチストとともに「地球へのラブ・ソング」というチャリティ・シングルを制作した。曲の売り上げは「地球の友」と「国連の基金」にすべて寄付されたという。

 ポールはさらには動物の権利問題にも取り組んでいる。その旗幟(きし)を鮮明した作品が1993年のアルバム『オフ・ザ・グラウンド』収録の「ルッキング・フォー・チェンジズ」だ。これは動物実験の中止を求めたメッセージ・ソングで、「脳に機械を埋め込まれた猫」、「目に化学物質を入れられたウサギ」、「タバコを吸わされるサル」を具体的に取り上げ、これらの倫理に反する残虐行為を止めるべきだと訴えている。

 同時期の作品「ロング・レザー・コート」では物語形式で毛皮批判が展開される。皮のコートを着ている男がいる、女はそのコートを褒めると彼を部屋に招き入れる、すると突如彼女は血のように赤いスプレーをコートに噴きかけて言う、彼の「ご立派」な皮のコートがたんなる「獣の皮のつぎはぎ」でしかないことを分からせたかったから、と。

 2012年には、ポールは「ヒューマン・ソサイエティ・インターナショナル」の「ビー・クルエルティ・フリー・キャンペーン」への賛意を示した。これは、多くの国で行われている、化粧品のためのウサギ、マウスやモルモットといった動物を使った実験を中止させようというもの。「ビューティ製品を動物で実験することで彼らに想像もできないよう痛みと苦痛を与えているというのが醜い真実なのだ」とポールはメッセージを出した。

 ポールは「倫理的なコマーシャリズム」を求めた。
 翌2013年、ポールは「クルエルティ・フリー・インターナショナル」の化粧品の動物実験を国際的に中止させるためのキャンペーンに参加した。同機関によると、世界の80%以上の国で化粧品の動物実験が行われているという。

 同年、欧州でこの問題に関して大きな動きがあった。EU(欧州連合)での化粧品の動物実験が全面的に禁止されたのだ。それとともにEU域内で売られる化粧品は世界のどこで生産されようとも動物実験によるものでないことが求められるようになったのである。その動きに連動して、「クルエルティ・フリー・インターナショナル」は生まれたのである。

 さらに画期的な動きとして、2021年1月、EUが制定したREACHといわれる「人の健康や環境の保護のために化学物質を管理する欧州議会および欧州理事会規則」のもとでは、動物実験はあくまでも「最後の手段」であり、原則は禁止であるという判断を欧州司法裁判所が下したことがある。これは具体的にはエクソンモービルの一組織による動物を使った毒性の研究について下された司法判断だった。

文・桑原亘之介

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