生活情報のコラム

限界に挑戦、山岳スキーの佐々木明 厳冬の谷川岳マチガ沢を滑降

佐々木明(撮影:Hisanori Kato)
佐々木明(撮影:Hisanori Kato)

 佐々木明。日本人のアルペンスキーヤーとして最も世界の頂点に近づいた男が、山岳スキーの世界に飛び込んで最も魅了されたのは群馬、新潟県境の谷川岳だった。冬季五輪で4度、日の丸を背負った佐々木が11月12日にリリースを発表したドキュメンタリームービー「TWINPEAKS」は、過去に800人を超える登山家やスキーヤーの命をのみ込んできた「魔の山」谷川岳でも屈指の絶壁「マチガ沢」に挑んだ数年間の軌跡を追った作品だ。

世界で探した究極の斜面

 佐々木は、アルペンスキーの最高峰ワールドカップ(W杯)で過去に岡部哲也が1度しか記録したことがなかった日本勢最高の2位に、3度入った実績を持つ。1桁順位も日本勢最多の18度。2014年ソチ冬季五輪を目前に控えて「世界のトップクラスにいるまま引退できる人はそう多くない。アスリートとして、そうした舞台にいるうちにキャリアを終えられるのはとても幸せ」と決断し、シーズン終了後に32歳で山岳スキーのプロに転身した。

斜面を求めモンゴルに遠征。左の馬上が佐々木明(撮影:Yusuke Hirota)
斜面を求めモンゴルに遠征。左の馬上が佐々木明(撮影:Yusuke Hirota)

 「多くの人に楽しんでもらい、刺激を与え、未来ある子どもたちに一つの道を示すこと」を信念に、自身を限界まで追い込んでくれる斜面を探した。行き着いたのは、海外のどの山よりも引き寄せられた谷川岳。夏スキーで知られるマチガ沢を厳冬に攻める壮大な挑戦に向け、北極圏のノルウェー・ロフォーテン諸島の急峻な峰で技術を磨き、モンゴル・アルタイ山脈のアイゼンもはじき返す氷河で体力と精神力を鍛えた。本作では冒険の過程がスケール感たっぷりに描かれている。

W杯名場面も必見

 佐々木のルーツをたどるように、本編は北海道には珍しくスキーのトップ選手が育たない道南から頭角を現したジュニア時代の回想から入る。オーストリアやスイスなど強豪国の選手がより多く出場するため、五輪や世界選手権よりもレベルが高いとされるW杯で表彰台に立ったウェンゲン(スイス)やシュラートミング(オーストリア)の貴重な大会映像も必見だ。

 ウインタースポーツの花形競技で新境地を切り開き続けた佐々木は、当時の栄光と挫折、葛藤を赤裸々に述懐する。自分らしさを追求するため新天地に選んだ山岳スキーの世界への敬意と覚悟も、熱い口ぶりで力説。そこから、谷川岳への挑戦物語が幕を開ける。

スタート地点に向かう佐々木明(撮影:Yusuke Hirota)
スタート地点に向かう佐々木明(撮影:Yusuke Hirota)

 アルペン日本チームの黄金期を牽引した寵児は、圧雪されていないコース外を攻めるバックカントリースキーをどれだけ極められるのか。2本の板で雪山を滑り降りる世界の奥深さを知る人なら、誰しも興味を引かれるはずだ。本作ではその答えが、圧倒的な衝撃を伴って明快に描かれている。

人生最大のスピード

 当初こそ、アイスバーンでターンを刻むアルペンレーサー特有の癖が抜けず、深雪の攻略に苦労するが、見事に壁を越える。クライマックスは、世界で最も遭難死者数が多い山としてギネスブックにも認定されている谷川岳の尾根から、あっという間に麓へ。マチガ沢を縦に縦にと攻め「人生で最大のスピードが出た」と振り返った集大成の滑りは圧巻だ。スキーやスノーボードを題材にする映像作家の草分け、関口雅樹氏は作中で「(スキーの)技術というか能力がものすごい」とため息交じりに語っている。

マチガ沢の急斜面に滑り出た佐々木明(撮影:Tomokazu Kuwano)
マチガ沢の急斜面に滑り出た佐々木明(撮影:Tomokazu Kuwano)

 本作は動画プラットフォームのVimeoから購入もしくはレンタルできる。DVDは限定千枚の販売で、収益は全額が全日本スキー連盟の選手強化プログラムに寄付される。

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