生活情報のコラム

ギリシャ・レスボス島、母を亡くした娘と難民たちを描く『メルテム-夏の嵐』 【コラム 映画再見】⑧

イメージ
イメージ

 太陽に映える美しい青、そしてバカンスという明るい印象の地中海が持つ、もう一つのイメージが静かに迫ってくる。命を賭して海を渡る難民たち。出身地も言葉も文化も宗教も違う人々が交差する場所。『メルテム-夏の嵐』(フランス・ギリシャ合作、2019年)は、エーゲ海に浮かぶレスボス島が舞台だ。

 友人ナシムとセクと一緒に、フランスから故郷ギリシャのレスボス島を休暇で訪れたエレナ。亡くなった母親はトルコからの移民で、ギリシャ人の義父もいるが、フランス語にこだわり、義父とはフランス語でしか話さない。義父の住む家に行く途中には、バカンス地には似合わない多くの難民の姿。レスボス島にも島民の数倍の数の難民が押し寄せた、数年前の欧州難民危機が物語の伏線だ。エレナの義父は、家族が身元をたどれるように、溺死した難民のDNAデータを構築している生物学者。のどかな港を背景にお茶を飲みながら、漁師の網に子どもの遺体がかかった、という会話が交わされる土地だ。

 エレナたちが途中で出会う同世代のエリアスもフランス語を話すが、シリア難民。島に渡ってきた時に母親と生き別れ、行方を捜している。「フランスには行かない方がいい。もっと信心深い国に」とアドバイスするナシムに、「宗教の名のもとにシリアで何が起こってると思う?」と激しく反論。そのナシムは警察で身分証の不携帯を問われ、「何語で話してると思ってるんだ、俺はフランス語を話すフランス人だ」と激高するアルジェリア系だ。

 国籍や民族などふだんは笑いのタネにして冗談を飛ばし合う若者たちが、難民が追い詰められる場面でとっさに取る行動と、これを黙ってそっと支える少数の大人たちの心根が、静かにまぶしい。文化の交差を反映した音楽と風景が、レスボス島の地理的、精神的な位置をくっきりと削り出しているように見える。

 冒頭、島の空港に着いたエレナが、物語の先行きを暗示するようにロストバゲージを告げられるが、荷物が間違って行った先は東京。この作品の監督は、流ちょうな日本語を話すバジル・ドガニスだ。このご時世でオンライン上映されており、「EUフィルムデーズ2020」で鑑賞できる。

Text by coco.g

新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ