生活情報のコラム

【スピリチュアル・ビートルズ】人種差別にいま再び声をあげたビートルズ 隔離政策を撤回させた‘64年

リバプールにあったペニー・レインの標識。これが塗りつぶされたものかどうかは不明。
リバプールにあったペニー・レインの標識。これが塗りつぶされたものかどうかは不明。

 ポール・マッカートニーとリンゴ・スターが今再び、人種差別に対して声をあげている。2020年5月下旬に米ミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが白人警官に不当に拘束され、首を圧迫されて死亡した事件を受けてのことだ。

 ポールは自らのツイッターで、「#BlackLivesMatter(黒人の命は大切)」と訴える抗議運動への賛意を表明するとともに、ビートルズ時代の1964年に米国でのコンサートをめぐって会場での人種隔離政策を撤回させた経験に触れた。

ビートルズは‘64年9月11日にフロリダ州ジャクソンビルのゲイター・ボウル・スタジアムで公演を予定していた。米南部で広がりを見せていた公民権運動を背景に、同スタジアムが人種隔離の対象とされていたことから、ビートルズ・サイドの対応が注目されていた。

「受け入れがたいね。バカげている」とポールは当時の記者会見で発言。他の3人も、有色人種を隔離するというのならば、コンサートには向かわないと断言した。

 その結果、客席を人種によって差別しない初めての大規模コンサートとなったのだ。そして、米国南部の大規模な公演会場は人種隔離政策を撤回していくことになるのである(DVD『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』2016年公開)。

 このドキュメンタリーの中には、同公演に行ったキティ・オリバーさんというアフリカ系アメリカ人女性歴史家が登場し、彼女の周りにいた白人たちとビートルズを熱唱した経験を振り返り、「違い」なんかすぐに消えるのではないかと思った、と語った。

 だが、それから60年近く経った今日においても、白人警官による人種差別的残虐行為が再び起こっていることに、ポールはショックを隠せず、怒りを露わにした。

 リンゴもポールとツイッターのメッセージの一部を共有した。「迅速な解決策はありませんが、私たちは変わる必要があるのです。私たち全員が人種差別を乗り越えるために協力する必要があります。私たちはさらに学び、さらに聞き入れ、さらに話し合い、自らをも教育し、そして何より行動を起こす必要があるのです」。

 「兄弟であるポールと同様に、ビートルズは平等な権利と正義の側に立ちます。そして平和と愛の実現のために働くことを決して止めません」(リンゴ)。

 ビートルズは彼らが子供のころから黒人音楽が大好きであったと公言した初めての白人バンドだといわれる。アメリカから海を渡ってやってくるレコードの音楽やラジオ・ルクセンブルクから雑音交じりに流れてくる音楽が、気に入れば気に入るし、気に入らなければ気に入らなかった彼ら。そこには白人、黒人の区別はなかった。

 ビートルズのお気に入りアーチストに、リトル・リチャード、チャック・ベリー、スモーキー・ロビンソン、レイ・チャールズといった黒人アーチストたちが含まれていたことは、4人のデビュー時から決して秘密ではなく、むしろ彼らが公言していたことだった。

 リトル・リチャードは今年5月に他界したが、ポールは語った。「ぼくがしていることの多くはリトル・リチャードと彼のスタイルに依っている。彼もそれを知っていてよく言ったものだ『俺がポールにすべてを教えたんだ』彼の言う通りだって、ぼくは認めざるを得ない」。

 スモーキー・ロビンソンは、ビートルズが黒人音楽を好きだと公言してくれたことを覚えており、彼らが彼の作品、例えば「ユー・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー」、をカバーしてくれたことをとてもうれしく思ったと語っていた。

 なお、ポールは‘68年には公民権運動を支持する気持ちを込めて「ブラックバード」という作品を作っている。『ホワイト・アルバム』に収録されている。ポールはソロになってからも、‘82年にスティービー・ワンダーとのデュエットで「エボニー・アンド・アイボリー」というメッセージ・ソングを発表、人種差別の解消を訴えている。

 フロイドさんの死をきっかけに急速に広がった人種差別反対運動は、「歴史」の見直しにも火をつけたようだ。新大陸を「発見」したとされる探検家コロンブスの銅像が「先住民の虐殺者」だとして引き倒されたり、南北戦争時代に奴隷制度存続を訴えた南部連合の初代大統領ジェファーソン・デイビスの像が破壊されたりしている。

 英BBCが6月12日報じたところによると、ビートルズの曲名にもなったリバプールの通り「ペニー・レイン」の標識が黒く塗りつぶされて、「レイシスト(人種差別主義者)」と落書きされた。リバプールは奴隷貿易の恩恵を受けて発展した港町で、この通りが奴隷貿易船のオーナー、ジェイムズ・ペニーに由来するとの説があるためだ。

 リバプール市の国際奴隷博物館は、この通りが18世紀の奴隷商人のペニーに由来するかどうかは定かでないと述べた。通りの名前の由来をはっきりさせるにはさらなる調査が必要だ、と広報官は語っている。一方で、奴隷商人ペニーは存在したものの、「ペニー・レイン」地域とは関係ないとする証言も飛び出すなど、議論が沸騰している。

 もちろん、ビートルズの「ペニー・レイン」は奴隷とは全く関係ないのだけれども。

文・桑原亘之介

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