生活情報のコラム

【スピリチュアル・ビートルズ】ビートル2世たちの人生(1) ジュリアン・レノン

『ヴァロッテ/ジュリアン・レノン』
『ヴァロッテ/ジュリアン・レノン』

 2020年4月、ポール・マッカートニー手書の「ヘイ・ジュード」の歌詞が書かれた紙が、91万ドル(約9千900万円)で落札されたというニュースが飛び込んできた。1968年にビートルズがこの曲をレコーディングした際に使われたものだという。

 この曲はポールが、ジョン・レノンと最初の妻シンシアが離婚することになったことで落ち込んでいた、息子のジュリアンを励ますために書いたことで有名だ。

 当時ジュリアンは5歳。そんな彼も今年57歳になった。ジュリアンは父ジョンがオノ・ヨーコとともに去り、自分たちが置き去りにされて深く傷ついたと、たびたび口にしてきた。

 その傷はいまだ癒えていないかのようだ。今年3月30日付英「オブザーバー・マガジン」電子版が報じるところによれば、彼は次のように語った。「ぼくは、母とぼくは見捨てられたように感じていた。でも、すべての人が私たちを忘れたわけではなかった。ポールだけはぼくたちのことを忘れなかった。そして“ヘイ・ジュード”を書いてくれた」。

 かつては激しい言葉でジョンを責めたこともあった。ジョンを「偽善者」と呼んだことさえある。「ジョンは世間に対し平和と愛を訴えたが、その平和と愛は最初の家族には訪れなかった」(シンシアの伝記本『ジョン・レノンに恋して』河出書房新社の序文)。

『ジョン・レノンに恋して』河出書房新社
『ジョン・レノンに恋して』河出書房新社

 複雑な感情を持つ一方で、やはり血は争えないのだろう。最初はシェフになりたいと思っていたジュリアンは結局、父と同じアーティストの道に進むことになった。

 84年、アルバム『ヴァロッテ』でジュリアンは鮮烈なデビューを果たす。弱冠21歳だった。父ジョンを彷彿させる容姿と歌声は、文字通りジョンの遺伝子(DNA)を受け継いでいるとファンの間で話題になる。ラジオで流れてきた「ヴァロッテ」の歌声を聞いて、ジョンの未発表の音源だと勘違いした人も多くいたというぐらいだ。

 タイトル曲は全米7位、第2弾シングル「トゥー・レイト・フォー・グッバイ」が全米5位を記録。ジュリアンは初めてひのき舞台に立ったビートル2世となる。順調な滑り出しをしたジュリアンはアルバムをコンスタントに発表していく。

 『シークレット・バリュー・オブ・デイドリーミング』(’86)、『ミスター・ジョーダン』(’89)、『ヘルプ・ユアセルフ』(’91)と、ここまでの4枚のアルバムは計550万枚の売り上げを記録したという。91年のアルバムに収録された作品「ソルト・ウォーター」は、オゾンホール・森林破壊・飢餓といった問題を取り上げており、全英ヒット・チャートで6位、全豪1位という大ヒットとなる。

『シークレット・バリュー・オブ・デイドリーミング/ジュリアン・レノン』
『シークレット・バリュー・オブ・デイドリーミング/ジュリアン・レノン』
『ミスター・ジョーダン/ジュリアン・レノン』
『ミスター・ジョーダン/ジュリアン・レノン』

 順風満帆に見えたジュリアンだが、独自レーベルを立ち上げたことなどで音楽業界の「壁」にぶち当たり苦悩する。7年のブランクを経て98年に第5弾アルバム『フォトグラフ・スマイル』を発表。さらに13年の間をあけて、2011年に『エブリシング・チェンジズ』をリリース。これが今のところジュリアンのアルバムとしては「最新作」である。

『フォトグラフ・スマイル/ジュリアン・レノン』
『フォトグラフ・スマイル/ジュリアン・レノン』
『エブリシング・チェンジズ/ジュリアン・レノン』
『エブリシング・チェンジズ/ジュリアン・レノン』

 ではジュリアンはその後、何をしているのだろう。2014年2月7日付の音楽専門ウェブサイト「ソングファクツ」に掲載されたインタビューで、絵を描いたり、写真を撮ったり、慈善活動に取り組んだりしているのだと語った。ジュリアンは環境問題、人道問題に取り組むために「White Feather Foundation」(白い羽根基金)を立ち上げた。彼いわく「ここのところ何年もオフだけど、それは自分を見つめ直し、本来の自分自身を見つけようとしているからなのだ」(2014年2月12日付米ニュージャージー拠点の週刊紙「アクエリアン」)。

 ジュリアンは世界中を飛び回って撮った写真をインスタグラムに投稿するなど、もっぱら写真家として活動するかたわら、子ども向け絵本を手掛けている。子どもたちに環境保護の必要性を理解してもらうことを目的とした絵本三部作『タッチ・ジ・アース』、『ヒール・ジ・アース』、『ラブ・ジ・アース』である。売り上げの一部は白い羽基金に寄付される。

絵本三部作『タッチ・ジ・アース』、『ヒール・ジ・アース』、『ラブ・ジ・アース』。
絵本三部作『タッチ・ジ・アース』、『ヒール・ジ・アース』、『ラブ・ジ・アース』。

 ジュリアンは2019年4月のデジタル・ラジオ「シリウスXM ’sビートルズ・チャンネル」で「ぼくがアルバムをまた制作するようになるかどうかは分からない。ぼくにとってアルバム作りとは旅をするようなものなのだ」と語っていた。

 他のビートルズ・チルドレンについて尋ねられると「みんな自分自身の道を見つけなければならない。彼らはみんな強くて、若くて、賢いやつらだ」。

 特にジョンとヨーコの間の子ども、つまりジュリアンの異母兄弟であるショーンについては「彼と一緒に仕事をする話をしたことがあるし、きっとそうするだろう」と述べた。

 そして「写真家としての仕事をさらに続け、自伝も書き始めるつもりだ」とも。

 父ジョンのしたことは忘れないけれど、母シンシア(2015年没)のおかげで彼を許し、理解しようとしているというジュリアン。そこのところが自叙伝ではどのように語られるのだろうか。ファンならずとも興味深いところだ。

(文・桑原亘之介)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ