生活情報のコラム

貧困と分断、怒りがやってくる場所 映画『レ・ミゼラブル』公開

(C)SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS
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 落ち込んでいる時、何かに失望している時にこの映画を見るのはお勧めしない。それほど重く、救いがない。換言すれば、それだけ現実を深く抉り出した作品といえる。フランス、パリ郊外の移民たちと警察権力のあつれきを描いた『レ・ミゼラブル』が公開された。

 パリ市郊外の街、モンフェルメイユ。移民を中心に“貧困層”と呼ばれる人々が団地にひしめき合う地域で、少年たちと彼らを取り締まる警察官が物語の主軸だ。別の地域から異動してきた警察官ステファンと、強権的に相手を抑えつけるクリス、そしてアフリカ系のグワダは共に犯罪防止班として街をパトロールする。ロマのサーカス団からライオンの子どもを盗んだ少年を追う中で、緊張が高じてグワダが放ったゴム弾が過って少年の顔に当たってしまう。それを偶然撮影していたドローン。動画が公開されれば暴動は必至、そこでクリスたちはデータの回収に奔走する。

 警察官たちの出自も、少年たちの民族もさまざま。市長と対立するロマ、街で一目置かれているムスリムのレストラン店主、捨てられた段ボールをソリ代わりに、ゴミが舞うコンクリートの空き地で遊ぶ子どもたち。そして彼らに「親を敬い、礼儀をわきまえるように」と諭す穏健派イスラム原理主義組織のムスリム同胞団。多様性という言葉など陳腐に聞こえる日常で、大人も子どもも精神的にギリギリのところで踏みとどまって生きているその荒い息遣いが、104分の作品の背後で緊迫感を持続させている。一触即発。2005年には実際にこの地域のすぐ近くで、警察に追われた移民の少年2人が、変電所に逃げ込み感電死、フランス全土の暴動に発展したことがあり、ゴム弾で大けがをした少年が憎悪を膨らませていく様子を見れば、否が応でも当時の経緯がよみがえる。全編を通してスクリーンから放出されるのは、怒りと憎悪。それらがどこからくるのか、見えているのに何もできないむなしさにさいなまれる。

 このモンフェルメイユがあるセーヌ=サン=ドニ県は、サッカーのワールドカップが開かれた大きなスタジアムや、歴代国王が埋葬されている大聖堂があることでも有名な、歴史的な場所だ。だが、パリ市内から行くには近郊電車やバスなどを乗り継いで1時間以上。この不便さも手伝って、移民や貧困層が多く住む地域になっている。そして文豪ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の舞台として知られている街だ。

 監督はこのモンフェルメイユに今も住むラジ・リ。作品冒頭に彼が映し出したのは、2018年のサッカーのワールドカップ優勝に沸くシャンゼリゼ、誰もが分け隔てなく一つのフランスに沸いた瞬間だ。『レ・ミゼラブル』というタイトルが意味する悲惨さや極貧、不幸を生み、フランスを分断しているものは何なのか、ラストにやってくるヴィクトル・ユゴーの一節がそのヒントになる。

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