生活情報のコラム

メダルの“重み”を実感 五輪デーラン会場に実物登場!

「オリンピックデーランひたちなか大会」の会場も展示された坂口裕之さん(野球)の1992年バルセロナ五輪の銅メダル=茨城県ひたちなか市総合体育館
「オリンピックデーランひたちなか大会」の会場も展示された坂口裕之さん(野球)の1992年バルセロナ五輪の銅メダル=茨城県ひたちなか市総合体育館

 いわゆる悪文の“常連”として外せないのが一昔の判決文。一文が長々と続き、一息つける句読点がなかなかやってこない例をはじめ、悪文の見本に事欠かない。誤解、誤読の余地を極力排する特有のお家芸なのか、判決文には、何回もかみしめないと味わえない“干からびた乾物”の趣がある。それでもごくたまに、砂漠の中のオアシスのような表現に出くわすことがある。よく知られるのが、死刑の合憲性が争われた1948年最高裁判決の一節。「一人の生命は全地球よりも重い」のくだりだ。広大無辺の全地球に引き付けて、計り知れない個人の命の尊さを強調する文学的な修辞だ。

 この表現は、その後の死刑判決文でも「枕ことば」のように繰り返された。“昭和の黄門”福田赳夫氏が首相当時、日本赤軍のハイジャック事件(77年)の際に犯人側の要求を受け、収監されていた仲間のメンバーを超法規的措置で釈放した際も、援用された。

 日本の司法はこの48年判決以来ずっと「一人の生命は全地球よりも重い」と繰り返しているが、憲法は「社会公共の福祉のために死刑制度の存続を承認している」との立場を崩していない。一方、世界を見渡すと死刑廃止国が多数を占める。「人権思想」が浸透しているとされる、いわゆる先進国に限れば死刑存置国は日本や米国ぐらいだ。将来、「一人の生命は全地球よりも重い」のくだりが、ねじれなく素直に、死刑廃止の“論理”として生かされる日は意外に近いかもしれない。

銅メダルの実物を母親の和恵さんに掛けてもらって喜ぶ横須賀理花(りな)ちゃん
銅メダルの実物を母親の和恵さんに掛けてもらって喜ぶ横須賀理花(りな)ちゃん

 命の「重さ」は測れない。それだけ深く重い尊厳がある。では五輪メダルの「重さ」はどうか。もちろん最新のはかりなら、各メダルの金属構成比に応じた重量を「〇〇・〇〇グラム」と寸分の狂いなく瞬時にはじき出すだろう。

 茨城県ひたちなか市で11月24日に開かれた五輪競技の体験イベント「オリンピックデーラン」では、高校野球の解説で知られる坂口裕之さんが92年バルセロナ五輪の野球で獲得した銅メダルの実物を披露。坂口さんは参加者たちに「好きなだけ手に取ったり、掛けてみたりしてください。触り放題、掛け放題です」と呼び掛けた。実物を手にしたほぼすべての老若男女が「思っていたよりも重い」と口にした。

 走ることが大好きでこの日のデーランを心待ちにしていた、ひたちなか市の横須賀理花(りな)ちゃん(6)は、母親の和恵さん(37)から、銅メダルを首に掛けてもらい、うれしそうな表情を見せた。理花ちゃんのような小さな子どもの感じる「重い」は「金属的な重み」へ素直な感想かもしれないが、大人の場合は、メダリストの「汗と涙と努力の結晶」を金属重量に“加味”した上での、「重い」だったのではないか。

12年ロンドン五輪で獲得した銀メダルを掲げる藤井瑞希さん(左から3人目、バドミントン女子ダブルス)。左端は坂口裕之さん、右端が宮﨑久さん(ボブスレー)
12年ロンドン五輪で獲得した銀メダルを掲げる藤井瑞希さん(左から3人目、バドミントン女子ダブルス)。左端は坂口裕之さん、右端が宮﨑久さん(ボブスレー)

 同イベントには10人のオリンピアンが加。12年ロンドン五輪のバドミントン女子ダブルスで銀メダルを獲得した藤井瑞希さんもメダルを持参し、多くの参加者にメダルを見せた。藤井さんのメダルは日本バドミントン勢初の五輪メダルだっただけに、実際手にした人は、ずっしりとした確かな“重み”を実感したことだろう。

 また、14年ソチ五輪出場(ボブスレー)の宮﨑久さんはトークショーで、メダルの重さとは異なる、ボブスレー競技で感じる「重力」の“重さ”について語った。ボブスレーに乗り100キロを軽く超える猛スピードで氷の下り坂を滑り落ちる際に猛烈に感じた重力について、「腰がきしむ思いがした」と表現した宮﨑さん。そんな競技上の大変な苦労を知ると、メダルを見る目も変わる。日本勢が今後、五輪のボブスレーでメダルを獲得するようなことがあれば、そのメダルは、重力にも負けないくらいの「重み」を見た人に感じさせてくれるに違いない。

開会式のあいさつでオリンピズムを「社会でも役立つ価値」と訴えたオリンピック・ムーブメントアンバサダーの田中和仁さん。参加者と片足立ち競争するなどして交流した
開会式のあいさつでオリンピズムを「社会でも役立つ価値」と訴えたオリンピック・ムーブメントアンバサダーの田中和仁さん。参加者と片足立ち競争するなどして交流した

 オリンピックデーランは87年から地方都市を中心に毎年開催。今年も群馬県太田市からスタートし、今回の開催を含め計7回開いている。デーランの開会式では毎回、田中和仁さん(体操)らオリンピアンを代表してあいさつするオリンピック・ムーブメントアンバサダーが、ベストを尽くして頑張ること(卓越)やルールを守るフェアプレー精神(敬意、尊重)、周りへの感謝や思いやり(友情)など、オリンピックが目指す価値(オリンピズム、オリンピック精神)の大切さを訴えている。オリンピックはメダルを超える価値があることを当然の前提としている。「オリンピック精神は、重い金メダルより、さらに重く尊い」ということだ。

 メダル数に一喜一憂する「ナショナリズム」の喧騒(けんそう)から、最も遠く隔たっているのが「オリンピズム」であることを、オリンピックデーランはさり気なく教えてくれている。

「持続可能な食と地域を考える」シンポジウム
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ