生活情報のコラム

芋焼酎“いいとこ取り”で香り厳選 鹿児島・大隅半島の酒造、こだわり製法実践

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「とりあえずビール」の後は、何に移りますか? 最近はハイボール人気に押されているが、焼酎が定番という人も多いのではないだろうか。焼酎は1970年代に第1次ブームで全国に広がり、酎ハイの第2次ブーム、そして本格焼酎の第3次ブームがあったとされている。最近は、以前より飲酒人口が減っているとはいえ、焼酎はすっかり居酒屋でも家庭でも定着したと言えよう。

 大手酒類メーカー、サントリースピリッツの推計では、日本で焼酎の愛飲者数は1019万人。そのうち「本格焼酎」といわれる「乙類」を飲んでいるのが949万人。さらに本格焼酎の中で「芋焼酎」を好む人が660万人と、芋が焼酎人気の中心になっているとみられている。

 昔は芋焼酎の独特の香りが「芋臭い」と敬遠する人もいたが、最近は甘い香りとすっきりとした飲み口の芋焼酎が増え、女性にも愛飲者が多い。

▽焼酎王国・鹿児島

 芋焼酎の本場といえば何といっても鹿児島県。鹿児島県酒造組合によると、県内に114の蔵元があり、すべてが焼酎を造っている。「焼酎王国・鹿児島」は、桜島の噴火による火山灰で形成されたシラス台地がサツマイモ作りに適しているとされ、鹿児島湾を挟んで西側の薩摩半島と東側の大隅半島では土質の違いから、それぞれ特徴を持った味わいがあるという。

 

収穫された「黄金千貫」。白っぽい皮が特徴。
収穫された「黄金千貫」。白っぽい皮が特徴。

芋焼酎の代表的なサツマイモは「黄金千貫(こがねせんがん)」という品種で、夏の終わりから秋に収穫期を迎える。大隅半島で新しい製造手法で焼酎造りを手掛ける「大隅酒造」(鹿児島県曽於市大隅町)を訪ね、サツマイモ収穫から選別、仕込み、蒸留を経て、焼酎ができるまでの過程を見た。

▽収穫期で集中的に製造

 蒸し暑さが残る9月中旬、曽於市のサツマイモ農家では、黄金千貫の収穫真っ盛りだった。黄金千貫は、石焼き芋などで使われる茶色の皮と違い、白っぽい皮で、でんぷん質が多く甘い香りがするという。収穫に立ち会っていた大隅酒造の斯波大幸(しば・ひろゆき)工場長は「大隅半島は火山灰の影響で黒い土質、ミネラルが豊富なのが特徴」と説明。天候などで年によって芋の出来が左右されるというが「今年の芋の出来はいい」と満足そうだった。

 

サツマイモ畑では、ハーベスター(堀り取り機)という作業車で収穫の真っ最中だった。
サツマイモ畑では、ハーベスター(堀り取り機)という作業車で収穫の真っ最中だった。
「黄金千貫」を手にする大隅酒造の斯波大幸工場長。「今年の出来はいい」という。
「黄金千貫」を手にする大隅酒造の斯波大幸工場長。「今年の出来はいい」という。

 黄金千貫は傷みやすいことから、収穫したら48時間以内に酒造工場に運び、加工される。大隅酒造では契約農家から購入した1日約30トンのサツマイモを仕込む。芋焼酎造りは地元産の原料にこだわり、収穫時期が終わる11月末までの約4か月で集中的に製造、その他の時期は麦焼酎などを造っているという。

▽人の手で1本1本選別

 搬入された芋はまず、処理しやすいように拳(こぶし)大の大きさにカットする。「芋切り」と呼ばれる作業だ。品質へのこだわりから、人の手で1本1本扱い、その過程で傷んだ芋は選別される。

「芋切り」の作業。傷んだ芋の選別も行われる。
「芋切り」の作業。傷んだ芋の選別も行われる。

その後、ベルトコンベアーで巨大な四つの蒸し器に運ばれ、約1時間半かけて蒸気で蒸す(芋蒸し)。適度な温度まで冷ましてから粉砕し、1次仕込みでコメから作ったこうじ菌で発酵させた「もろみ」を加えて2次仕込みに進む。2次仕込みで約9日かけて発酵させ、蒸留の過程へ。

巨大な釜(7・5トン)4機で一日30トンの芋を蒸し上げる。
巨大な釜(7・5トン)4機で一日30トンの芋を蒸し上げる。

▽伝統製法の中で独自色

 大隅酒造の焼酎造りで最も重要なのがこの「蒸留」だ。「単式蒸留」と呼ばれる製造法で、通常の焼酎造りでは、蒸留の最初の段階で焼酎は華やかな香りを放ち、次第に芋の甘みやコクが加わる。その後、時間の経過とともに焼酎臭さが増していく。通常の製法では、アルコール度数は、蒸留直後の原酒で37%程度ある。

蒸留された焼酎の香りを確認する山ノ内洋一さん。
蒸留された焼酎の香りを確認する山ノ内洋一さん。

 大隅酒造では、この過程の前半の香りの高さが残っている段階で原酒を取り出す。いわば、おいしい部分だけを“いいとこ取り”するのだ。大隅酒造では「香り厳選蒸留」と呼んでいるという。アルコール度数も45-50度と高い。製造責任者の山ノ内洋一さんは「この独自製法により、通常の焼酎より甘い芋の香りを出すことができる」と解説してくれた。

▽カクテルにも

 焼酎でありながら、通常より香りが高いことから、地元・鹿児島県霧島市のバー「万(よろず)」の店主でバーテンダーの吉富万洋(よしとみ・かずひろ)さんが注目。地元食材とのマッチングを考慮したオリジナルカクテルを考案した。

地元のバーで芋焼酎のオリジナルカクテルを考案した吉富万洋さん。
地元のバーで芋焼酎のオリジナルカクテルを考案した吉富万洋さん。  

 数々のカクテルコンテストで受賞歴を持つ吉富さんが、大隅酒造内で披露してくれたカクテルと食材は3種類。「大葉とレモンのモヒート」と「地鶏のカルパッチョ」、「季節のモスコミュール」と「キビナゴのエスカベッシュ」、「煎茶のサングリア」と「豚味噌(みそ)のクリームチーズカナッペ」。3種のカクテルは、すでにバーのメニューになっている。

(左から)豚味噌のクリームチーズカナッペ、キビナゴのエスカベッシュ、地鶏のカルパッチョ
(左から)豚味噌のクリームチーズカナッペ、キビナゴのエスカベッシュ、地鶏のカルパッチョ

 吉富さんは「従来の芋焼酎は、芋臭さが強く、カクテルにはあまりなじまなかった。大隅酒造の芋焼酎は、すっきりして重くないのでどんなカクテルにも合う。特にかんきつ系との相性がいい」と絶賛する。

▽「新しい風」

 一口に焼酎といっても、お湯割り、水割り、ロックなど飲み方もさまざま。中でもすっきりとした味の芋焼酎は香りが良く、カクテルでも楽しむことができる。

焼酎王国・鹿児島では伝統製法で、各蔵元が独自の本格焼酎造りをしているが、新たな製法を取り入れることで、焼酎は別の顔を見せることもある。大隅酒造の斯波工場長は「これまでの製法に新たな技術を取り入れることで、焼酎の世界に『新しい風』を吹かせていきたい」と意気込んでいる。

大隅酒造で造られたサントリー本格芋焼酎「大隅〈OSUMI〉」と、キビナゴやさつま揚げなど地元食材はよく合う。
大隅酒造で造られたサントリー本格芋焼酎「大隅〈OSUMI〉」と、キビナゴやさつま揚げなど地元食材はよく合う。
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