生活情報のコラム

「母親」という人間像 映画『パリの家族たち』

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 「母親であることは、ただ子どもを産むことよりずっと複雑だ」。脚本家でもあるマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督のこの言葉が、母親に焦点を当てたこの作品のすべてを語っている。さまざまな立場の人々が、「母親」という人間をどう捉え、どう向かい合おうとしているのかを描いた映画『パリの家族たち』が公開された。

 出産の前と後で女性の人生は一変する。どんな立場にあっても、出産から始まる母親たちの“闘い”は決して平坦な道をたどらない。子どもの世話をするという狭義の「子育て」以上に、未熟な自分と向き合い、自身の情けなさを認めて受け入れるということの方が、はるかに大きなストレスになる。「母親失格だわ」と自分につぶやく台詞には胸が痛くなる。誰もが繰り返し陥る母親ならではの自己嫌悪だからだ。

 舞台女優、ジャーナリスト、大学教授から街角の花屋、そして大統領にいたるまで、さまざまな生き方をする女性たちが、自らの母性や、年老いた母親との関係に悩み苦しむ。「子どもを産んで何かが変わりましたか?」と問われた大統領の返答は、おそらく子どもを持ったことがあるすべての女性の琴線に触れるはずだ。

 原題は“La Fête des mères”、フランスでは母の日を意味する。オルセー美術館にあるホイッスラーの「画家の母の肖像」を読み解きながら、母の日の由来を解説する大学教授、ナタリーの言葉が軸になっている。だが実はナタリーは独身を謳歌し、子どもを持つ世間の母親たちに強烈な反感を持つという役どころだ。作品の支点は「母親」だが、子どもの母としてではなく、自分の母親と、子どもを持たない自分の感情に振り回されるナタリーの存在が、物語全体のバランスをとる重心になっている。

 監督は、問題児が集まる高校のクラスが歴史コンクールで優勝した実話をもとにした作品、『奇跡の教室』で日本でも知られており、フランスでは、映画業界の女性たちがつくるサークルの設立者でもある。余談だが、これはエンドロールが始まるや否や席を立つと最後のワンカットを見落とす作品の一つ。原題を軽快に解釈できるオチが待っているから、ラスト103分まで着席を。

Text by coco.g


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