生活情報のコラム

情報格差にも向き合う知の砦 映画『ニューヨーク公共図書館』

(C)2017 EX LIBRIS Films LLC - All Rights Reserved
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 3時間25分の作品に見入っていると時々、図書館の話だということを忘れる瞬間があった。それほど彼らの役目は多岐に渡り、地域住民がつながる“場所”としての求心力が印象的だ。そしてもう一つ、トランプ大統領に不安を抱く人にとって、「まだアメリカは大丈夫」という多少の安堵(あんど)をもたらす時間でもある。知の殿堂と呼ばれる米図書館の表と裏双方を撮り切ったドキュメンタリー、『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』が公開された。

 冒頭、「利己的な遺伝子」で知られるリチャード・ドーキンス氏が、宗教と科学について話す場面に思わず引き込まれるが、これは図書館が開いているトーク企画。訪れた市民誰もが立ち見で参加できるイベントだ。書物を求めて足を運ぶ図書館の役割は、市民が「知」を分かち合う場として拡大している。ドーキンス氏のような“ゲスト”だけでなく、司書たちもその知の一端を担う。資料の探し方からどこに行けばその手掛かりが得られるか、市民からの時に要を得ない長い相談に丁寧に答える言葉は、図書資料の整理やレファレンスという司書の一般的なイメージをはるかに超えている。88カ所に及ぶ分館が地域のニーズを探りつつ行う活動も、ダンス教室から就職活動のサポートまで幅広い。その財源を確保するため奔走する図書館の裏側も丹念に追っている。

 ネットが普及し、図書館の役割の変化が議論される中でも、「知と情報を共有する場」という理念は動かない。紙からデジタルへと“媒体”が入れ替わっても、市民がいかに平等にその中身にアクセスできるか、という問題意識にずれはない。パソコン教室やネット回線の提供、貸し出しなどを行う図書館の方針は、紙だけに執着しない、コンテンツ自体の価値を重視する“実質主義”だ。その価値を分かち合い、後世につなぐための方策を誰もが必死に考えている。

 休憩をはさみ、3時間半に及ぶ大作、しかもドキュメンタリー。だが、劇場は意外にも満席だった。89歳になったワイズマン監督作品への関心はもちろんあるだろう。だが図書館という場所が、身近にありながら“遠く”なっている今の日本の現状に、案外多くの人が危機感を持っているのかもしれない。

Text by coco.g


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