生活情報のコラム

紙の匂いと手触りの記憶を呼び起こす 映画『マイ・ブックショップ』

(C)2017 Green Films AIE, Diagonal Televisio SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.
(C)2017 Green Films AIE, Diagonal Televisio SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

 主人公のフローレンスが、真新しい本を開き、ページの間に顔を埋めるシーンがある。紙の本に慣れ親しんだ世代なら、一度はやったことがあるはずだ。紙質によって異なる手触りと印刷の匂い。きしむ木の床と本棚、石油ストーブに手編みのセーター。そして手書きの手紙の往復。20世紀の良質な記憶が詰まった作品は、回顧を“懐古”にしてくれる。映画『マイ・ブックショップ』が公開された。

 小さな町に小さな書店を開く未亡人と、それを邪魔する権力者。富と権力を手にした町の有力者と、実直に生きようとする善良な一市民という構図は、時代を問わない。小さな本屋がさまざまな困難に立ち向かうというプロットも、90年代の『ユー・ガット・メール』など軽妙なアメリカ映画でもおなじみだ。

 だが、この作品が特別なのは、文学を含むアートに対する愛情に満ちている点。フローレンスが本好きの紳士に送る『華氏451度』や『ロリータ』。曇天のイギリスの町並みと海辺の灰色を背景に、その本の選択眼がひときわ輝く。フローレンスが書店を開こうとした建物を芸術センターにしたいと横やりを入れる有力者の思考回路に、この紳士が投げる「芸術に“センター”など存在しない」という言葉も、美しい装丁やカラフルな本の背表紙、アラジン型の石油ストーブと共に、ずっしりと重みを蓄える。

 もう一つの特徴は、モノローグ。最後に明かされる語りの“主”と、書店の棚の中央に置かれた一冊の本に気付けば、物語の行方に関わらず心にポッと灯がともる。

text by coco.g

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